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高校生・大学生

中学卒業後…高専という選択 技術力、グローバル力を磨く

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 中学卒業後の進路は高校だけではない。将来、技術者を目指す人には5年制の高等専門学校(高専)も選択肢の一つ。最近は技術力に加え、グローバル化や人工知能(AI)の発達に対応できる人材を育てようと、進化しつつある。

 航海士や機関士の育成で長い歴史を持つ三重県鳥羽市の鳥羽商船高専。ここ数年で志願者数を伸ばしているのが、プログラミングなどを学ぶ制御情報工学科だという。

 一年次から国語や歴史などの一般科目と並行して情報工学や機械工学といった大学レベルの専門科目を勉強。五年間でエンジニアとして必要な知識や技術を習得する。最近はマイクロソフト社などの企業と連携して、社会問題を解決するためのシステム開発に力を注ぐ。

 同学科の河口祭さん(五年)ら三人のチームが取り組んでいるのが、県内で養殖されている魚に自動で餌を与えるAIシステムの開発だ。「収入が不安定で若者の参入が少ない」と漁師から聞いたのがきっかけ。水温や潮の満ち引きなどのデータを基にAIが最適な餌の量や時間を決め、自動装置から餌を無駄なく与える仕組みを考案した。

 チームは今春、学生向けのITコンテストで東京大の二チームと並んで優秀賞を獲得。現在は七月に米国で開かれる世界大会に向け英語でのプレゼンテーションに磨きをかける。東京のIT企業に就職予定の河口さんは「新しい技術を吸収し、地域の課題を解決できるエンジニアになりたい」。

 高専は「専門学校」という名称から高卒者が対象と思われがちだが、中学卒業後から入学できる五年一貫教育だ=図。国の産業を支える技術者を育成しようと一九六二(昭和三十七)年に設立され、全国に五十七校(国立は五十一校)ある。高校生と同じ年齢の学生が在籍するが、大学同様「高等教育機関」の位置付け。機械系や情報系、土木・建築系などの学科があり、卒業すると「準学士」の称号を得られる。自ら開発したロボットの性能を競う「高専ロボコン」は、“理系の甲子園”ともいわれ人気がある。

 普通の公立高校より進級に必要な基準が六十点と高い一方で、大きな魅力となっているのが就職率の高さや進学のしやすさだ。国立高専機構によると、即戦力を求める企業や自治体の期待に応え、二〇一六年度の就職率は大学を上回る99・2%、求人倍率は一人あたり「約二十倍」と引っ張りだこ。学びを深めたい人には、高専が設ける二年間の「専攻科」や大学への道もある。

 もともと高専生の受け皿としてつくられた豊橋技術科学大(愛知県豊橋市)や長岡技術科学大(新潟県長岡市)をはじめ工業系の大学の多くが高専卒業者対象の編入学試験を実施。センター試験を経ずに国立大で学ぶことが可能とあって、進学を見据えて高専を受験する中学生もいるという。

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 国際交流や英語教育に力を入れる学校も目立つ。

 愛知県豊田市の豊田工業高専では、専攻科を含めた七年間で「TOEIC600点」の目標を掲げ、「英語多読」などの授業に取り組む。指導する西澤一教授は「もともと高専生は英語力が低いとされていたが、製造業では技術者として海外赴任はもちろん、国内にいても外国人と仕事する機会が増えている。技術に加えて語学力を磨き、異文化に慣れておくことが必要になっている」と説明する。

 図書館には海外の児童書や小説など約三万八千冊を所蔵。学内には自分のレベルに合わせて選んだ本の英文を読んだりCDで聴いたりする学生の姿が少なくない。六百冊以上を読んだという電気・電子システム工学科の女子学生(三年)は「英語は苦手意識が強かったが、海外の最先端の技術を学ぶためにも英語力を高めたい」と話す。

 同高専では、三年生を中心に毎年約四十人が民間団体を通して約一年間の長期留学を経験する。昨年にフィンランドへ留学した同学科の稲垣海さん(三年)は「普通の高校なら大学受験で忙しい時期だが、五年間の高専だからこそ興味があることに思う存分挑戦できる。将来は世界で活躍できる技術者になりたい」と語った。

 (川合道子)

 

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