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高校生・大学生

大学の不祥事、危機管理対応は? 正しく速い情報開示を

大学職員らを対象に開かれた“模擬”記者会見=大阪市内で

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 日本大アメリカンフットボール部員が、悪質なタックルにより関西学院大の選手を負傷させた問題で、日大の対応に大きな注目が集まった。入試ミスへの対応では大阪大や京都大にも厳しい目が注がれた。大学は不祥事が起きた場合、どう対応すればいいのか。危機管理の課題を探った。 

 留学先の国で大学生が誰かに暴行され、亡くなった−。四日、大阪駅に近い会場で“模擬”記者会見が開かれた。記者役と大学幹部役を企画スタッフが務め、関西の大学職員三十人強が後ろから見守る。

 「なぜ被害学生の名前が明かせないんですか?」

 「大学の責任は?」

 記者役から質問が飛ぶたび、大学の幹部役が丁寧に答えていく。「ご家族の了解を得ていないので差し控えたい」「尊い命が失われた重大な事案と認識しています」。職員からも質問が出て、緊迫したやりとりは一時間ほどに及んだ。

 企画したのは、海外留学時などの危機管理サービスを大学や企業に提供する日本アイラック(東京都新宿区)。大学側の需要が近年増え、七日の東京会場も満席で、四十大学から五十四人が出席したという。

 職員からは「想定問答はどのくらい必要か」「会見で失言しないコツを教えて」など悩みの声も。「どの分野の質問に誰が答えるか役割分担が必要」「会見は記者の後ろにいる被害家族や学生、関係者、一般の人に語るつもりで答えて」と助言した。

 ある女子大職員は「大学全入時代の今は、不祥事にしっかり対応しないと大学のブランド力が低下し、存亡に直結する。今日学んだことをいかしたい」。兵庫県の私立大職員も「上層部を含め、危機への意識をいかに日ごろから共有し、備えるかが大切。日大の事例は悪い見本で、危機意識が高まり、ありがたかった」と明かした。

 日大の問題では、どの対応がまずかったのか。日本アイラックの山下寿人・CS事業部長(54)は「日大側は素早く事実を調査し、経過や現状を公表すべきだったのに、会見では監督側の言い分を出すだけで自己弁護や組織の保身を優先している印象を与え、学生や教職員を守る姿勢が見えなかった。会見の意義や目的、広報対応の重要性を分かっていれば、百年以上かけて築き上げたブランド力と信用が一回の会見で失墜するリスクは防げたのでは」と分析する。

 「大学スポーツは良い結果だとイメージアップになるし、事件が起きると大きなダメージを受ける。指導者にもコンプライアンス研修などで、その意識を徹底してもらう」と話すのは、広報力に定評のある近畿大(大阪府東大阪市)の加藤公代広報室長(48)だ。

 日大の問題では監督の会見時に大学幹部も同席し、日大側の見解を明らかにすべきだったと指摘。「不祥事では正しく速やかに真摯(しんし)に情報を開示することでダメージが最小限に抑えられ、学生や大学のブランド力が守られると考えている」

 実際に、二〇〇九年に近畿大のボクシング部員が起こした強盗事件では、理事長の判断も仰ぎ、逮捕が発表された日の夜に同部総監督や学生部長が出席して会見を開き、廃部も発表。昨年のセクハラ事案でも関係者の処分が決まった当日に副学長らが会見した。「学生が関与する場合は大学の教職員が矢面に立って批判を受け、一方で、不祥事に無関係で傷ついている周囲の学生を守ることも大切だ」

 大学はどう備えるべきか。山下さんは学内にトップ主導の危機対策委員会をつくることを勧める。留学先での事故や教員の不祥事など、学内のリスクを洗い出し、深刻度を考えて一つ一つ対策をとるべきだという。

 「大学は教育機関だからと、いろいろなものに守られ経営や運営体制の中身も見えにくい組織。けれど不祥事では、トップの責任で事実を調査し原因を究明して結果をメディアに公表するのは社会的責任で、学内の処分や再発防止も必要。大学はもっと世論を意識した方がいい」

 (芦原千晶)

 

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