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高校生・大学生

在学中に妊娠、出産……退学「仕方ないのかな」 学業継続、どう支援

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 高校生が妊娠すると、学校側に促されたり周囲の目が気になったりして自主退学するケースが少なくない。学業の中断は、就業の機会を狭め将来的に貧困を招く可能性がある。海外には、妊娠・出産した生徒の卒業を市民や企業と一体となって支える学校もある。

 名古屋市に住む二十代女性が妊娠に気づいたのは、高校三年の夏だった。交際していた六歳年上の男性との赤ちゃん。担任に出産することを告げると、「おめでたいことだが、単位が取れないと留年することになる。学業との両立は難しいのでは」と返ってきた。

 卒業まで約半年。「続けたいが、仕方ないのかな」。最後は自分から「辞めます」と申し出た。

 出産後、四大や短大などの受験資格が得られる「高校卒業程度認定試験」を受けようと試みた。ただ独学では難しく、予備校通いや通信講座で勉強時間を確保するにも子どもの預け先や費用がハードルになった。

 ある日、求人情報誌をめくると、勤務内容や給与が気に入ったコーヒーショップの採用条件に「高卒」と記載されているのに目が留まった。高校進学率が九割を超え、三年で卒業するのが当たり前とされる時代。「妊娠するのが少し早かっただけで、こんなに仕事の幅が狭まっちゃうんだ」

   ■    ■

 文部科学省が全国の公立高校(全日制、定時制)を対象に初めて実施した調査によると、二〇一五、一六年度の二年間で学校が生徒の妊娠を把握したのは計二千九十八人。うち自主退学した生徒は、学校が勧めたケースを含めて六百七十四人だった=グラフ。一方で通学を継続した生徒も四割近くいたが、児童生徒課によると「中絶した場合も含まれる」という。

 妊娠した生徒への対応は学校により異なる。愛知県の三年女子は妊娠した友人が学校を辞めた際、教諭から「何かあったら対応できないから」と聞いて疑問を抱いた。「学校によっては卒業できた人もいる。本人が産むと決めた以上は、支えるべきだったと思う」

 同県の女性(19)は通信制高校三年の秋に出産。退学を覚悟して妊娠を報告すると、教諭が卒業に必要な課題を出産までに終わらせられるよう計画を立ててくれた。「ただでさえ不安な中で心強かった。卒業できたことは、今も自信になっている」

 文科省は三月、生徒が妊娠した場合は体育の実技をリポートで代替するなど配慮し、安易に退学勧告しないよう各都道府県教委に通知した。妊娠した生徒から相談を受けた経験がある公立高の養護教諭は「有名大にどれだけ進学させたかだけでなく、こうした生徒を卒業まで支援する学校が評価される社会になることも大切だ」と指摘する。

◆米国では校内に託児室整備 インターン後押し

 若年妊娠の支援に詳しい静岡大の白井千晶教授(家族社会学)によると、米国では託児室を備える公立高校は珍しくない。

 中でもコロラド州には主に十代の妊婦や母親だけが通学できる全日制高があり、妊婦健診も受けられる保健施設も併設。単位が取得しやすい四学期制で、産前産後は教員らが自宅訪問して学業の継続をサポートする。「安定した職業に就くために大学進学する生徒も多い」という。

 授業に出席して得たポイントに応じベビー用品や衣類がもらえる制度があり、地域住民や企業からの寄付が支える。就職を見据え、企業でのインターンシップを支援する団体もある。

 白井教授は「日本では高校生の妊娠は周囲から冷たい目で見られがちだが、地域が応援していることを感じられる仕組みが重要。妊娠した生徒が学業を継続できるよう高校のソーシャルワークが求められる」と話す。

 (川合道子)

 

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