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高校生・大学生

セクハラ被害、早めの相談を 啓発や法整備に課題

ハラスメントについて書かれたパンフレットやクリアファイル

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 セクハラ問題への関心が高まっている。大学では特定の教員に付いて専門教育を受けるため、学生は被害に遭いやすく課題も多い。ただ、この二十年で対策や体制の整備が格段に進んでおり「被害に遭ったら早めに声をあげて」と相談員たちは語る。

 大学のセクハラは、学生や教職員など構成員が多様で、研究室という閉鎖的な環境で卒業の認定や指導をする強い立場の教員が加害者になりやすいのが特徴だ。

 一九九九年、事業主にセクハラ防止の配慮を義務づけた男女雇用機会均等法改正に伴い国が出した通知を受け、大学は相談窓口を置き、防止の指針や、起きたときの手続きなどを定めてきた。教員が権威をかさに学生らにいやがらせをするアカハラやパワハラにも対応し、教職員や学生に研修を実施。四年前の国の調べでは、99・1%の大学が相談窓口を置く。

 「最近は教員の意識もかなり高くなった。こちらもビクビクで、女子学生と一対一で話す時は、ドアを開けるとかマニュアル通りに行動する」と国立大の四十代男性教員は話す。

 実際にセクハラが起こり、被害者が学内の相談窓口に訴えると、相談員などが事情を聴いて寄り添うことが多い。大ごとにせず、環境を改善する策が見つけやすいという。必要に応じて加害者にも聴取し解決策を探る。全学的な委員会が開かれ調査委員会が立ち上がり、処分に至るときもある。

 体制や対策などは各大学で異なり工夫も。名古屋大(名古屋市千種区)はハラスメント相談センターに六人の専任相談員を置く。昨年度は二百件弱の相談が寄せられ、うち15%がセクハラ関連。名古屋工業大(同市昭和区)は、被害者が気兼ねなく相談できるように中立的な立場の外部相談員(弁護士)も置く。南山大(同)は多言語の対策防止の冊子を作った。

 しかし、被害はある。

 相談の現場からは「留学生が増加し、文化の違いによる相談が増えた」「指導教員が学生に好意を持つ疑似恋愛型も多い」「セクハラがブランド力低下につながる私大に比べ、国立大の教員の意識は低い」などの声があがる。ある国立大教授は「この十年ほどで、食事の強要とか酒の勢いで抱きついたとか、大学院生が教員にホテルに連れ込まれたケースも見聞きした」。

 関西の国立大大学院に通っていた女性は、既婚の指導教員に好意を持たれ、キスをされた経験がある。「業績も人柄も尊敬していただけに混乱しショックだった」。その後研究室を変わったという。学生が研究者を志す場合、訴えづらい事情もある。加害者の教員がその分野の権威だと、報復で仕事や人脈を奪われるリスクもあるからだ。「訴えをあきらめ、一緒に悔しい思いをしたことがある」とある相談員は明かした。

 加害者が学生のケースも。ある女子学生は、部活動の冊子に、立場の強い部員から虚偽の性的な内容を書かれた。「謝罪を求めたけれど『下ネタくらい我慢すればいい』と言われ、さらに傷ついた」。セクハラ判例に詳しい吉川英一郎・同志社大教授は「下ネタも、大勢が笑う陰で一人が苦痛だと思うなら重大なセクハラに該当しうる」。

 どうすれば防げるのか。「各大学の現状や課題を共有すれば、より良い対策作りにいかせるのでは」と提案するのは、豊島明子・南山大ハラスメント問題対策委員長。吉田あけみ・椙山女学園大教授(ジェンダー社会学)は「男尊女卑的な人権意識がまだあり、啓発が欠かせない。悪質な場合もあり、法整備を含めた議論もすべきだ」。セクハラ事案を複数知る国立大准教授は「学内調査では自浄作用が働きづらい。国の相談窓口が必要では」と語る。学内で解決しないときは弁護士に相談するのも手だが、「裁判では被害者は勝訴しても、詳細が公になり精神的負担が大きい。調停の方が使いやすいのでは」と吉川教授は話した。

 (芦原千晶)

 

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