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高校生・大学生

<大学考 2018年問題> 公立化、再考の動き

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 地方を中心に、私立大を公立化する動きが広がる中、二月下旬、新潟産業大の公立化の要望を新潟県柏崎市が断った。文部科学省によると初めてのケースという。授業料が安くなり人気が出て若者の都市部流出を防ぐ効果が期待される公立化だが、一方で「税金による私大の救済」と批判の声もある。その意義を考える。

 二月二十日、雪深い林が広がる柏崎市の郊外。「つらい。大学を存続させるため、これから方策を考えたい」。市に訴え続けてきた公立大学法人化の道が閉ざされ、新潟産業大の金子和裕・学長補佐(62)はため息をついた。

 同大は一九八八年に市と県の支援を受け、短大から四年制化した。その後県内の私大は増え、競争が激化。二〇〇〇年から定員割れし、学部改組や経費削減に取り組んだが事態は好転せず、四年前に市による公立化を要望した。市議会では「大学は市の財産。廃学になったら市の損失は莫大(ばくだい)」「公立化すれば定員が充足し、市に負担をかけることはない」と訴えてきた。

 今年一月には、「産官学協働の地域実践教育大学」を目指す事業計画を提出したが、桜井雅浩市長(55)は二月十四日の市議会で、「計画には独自性も財務の裏付けもなく、公立化は難しい」と答弁。二十三日に取りやめを正式表明した。

 決断を後押ししたのは昨年、市が委託した民間調査会社による報告書。「現状で公立化しても延命策にすぎない」とし、公立化で年に約三億〜五千万円の市負担が生じる可能性を示した。また、十八歳人口が今後減ることから「公立大学でさえも生き残りの最前線に立たされる」と予測した。

 文科省によると、新潟県内の大学入学者数は二年前に約六千人だったが、十五年後には約四千五百人に減る見通し。桜井市長は「地域における大学の役割は理解している。公立化を要望する署名も出ている」と語る一方で、言い切った。「公立化すれば全てうまくいくという泥縄式の財政論議に行政がくみするわけにはいかない。リスクが高すぎる。公立化は(私大の)起死回生の策といわれるが、そんなに甘くないと思う。魅力があり、学生に選ばれる大学でなければ公立化の意味がない」

◆自治体の負担増議論を

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 公立大は一九九〇年代から地方を中心に急増=グラフ。四月には公立小松大(石川県)、長野県立大、諏訪東京理科大(長野県)も加わり、九十二校になる。

 すでに公立化した元私立大は、二〇〇九年度の高知工科大(高知県)を皮切りに八校ある。魅力は、安い授業料。料金を下げられるのは、運営自治体などを介し、国から地方交付税交付金が入るからだ。春に公立化する諏訪東京理科大では、一八年度入試(前期)の志願倍率が二年前に比べ、三・六倍に伸びた。「志願者の学力レベルが上昇し、全国から志願者が集まるなどの変化もあった」と担当者。

 ただ、課題もある。総務省によると、公立大絡みで国が算定する同交付金の需要額は、この十年で三百億円以上増えた。将来にわたり経営責任を負う自治体の負担も懸念される。昨年公立化した長野大(長野県)は同交付金でまかないきれない施設整備費を在学生から徴収する計画を立てたが、文科省からの助言で断念。設置者の上田市の負担となる可能性もあり、市の担当者は「公立化で学生数や経済効果は維持されたが、市には財政的、人的な負担も生じる。相当な覚悟が必要と再認識した」とする。

 「大学大倒産時代」の著者、木村誠さん(73)は「少子化で経営難の私大が増え、さらに公立化は進むだろう。地方の大学は一度なくすと復活が難しい。地域の展望とニーズを踏まえ、本当に公立大が必要か議論を尽くすべきだ」と語った。

 (今村節、芦原千晶)

 

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