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高校生・大学生

地域色生かし独自教育 地方の公立が全国から生徒確保

高校生ホテルの“開業”に向け、白馬の観光の現状などについて意見を交わす生徒たち=長野県白馬村の白馬高で

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 公立高校の統廃合が進む地方で、その土地ならではのユニークな教育を打ち出し、生徒を全国から募集する動きが広がっている。高校時代に地方へ「国内留学」する魅力とは。

 雪化粧した三千メートル級の山々が連なる長野県白馬村。スキー客でにぎわう麓の県立白馬高校で一月中旬、教室と東京のIT企業をインターネット電話(スカイプ)で結び授業が行われた。

 国際観光科の一年生が、国内外から訪れる観光客向けの宿泊プランを企画販売し、客ももてなす「高校生ホテル」に挑む。十一月の“開業”に向け、この日は企業が持つ顧客データなどを基に白馬の現状や課題を探り、意見を交わした。東京都出身のクロフォード一樹さん(一年)は「地域全体が学びのフィールドでワクワクする。まちの活性化に自分たちも関わることができ、やりがいを感じる」と興奮気味に話した。

 同校は二〇一六年度から、一学年に二クラスあった普通科の一つを「国際観光科」に改め、生徒を全国から募集。人口九千人の村にオーストラリアを中心に外国人旅行客が年間延べ十万人訪れる地域性を生かし、村内の観光案内所、ホテルでの英語実習や国際交流をPR。自治体が大学進学をサポートする塾や寮を整備し、一七年度は二学年七十人のうち半数近くが県外出身者だ。

 「大好きな山の近くで学びたい」と入学した名古屋市出身の井上梓さん(二年)は「予想以上に英語を話す機会があり、海外の文化にも興味が広がった」。新潟県出身の緒方大夜さん(一年)は「フィールドワークが多く、座学では得られない力を養える。将来はNPOで環境問題に取り組みたい」と意気込む。

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 県外からの生徒に刺激を受けるのは地元出身の大沢史奈さん(普通科三年)。「大学は考えていなかったが、もっと学びたい」と、四月に新設の長野県立大へ進む。「広い視野を持って地域で活躍できる人になりたい」と夢を語った。

 生徒の全国募集に踏み切った背景には、地域から高校がなくなる危機感がある。人口減少に加えて優秀な生徒ほど偏差値の高い村外の高校に流出。全校生徒数は一九八九年度をピークに減少が続き=グラフ、二〇一三年度からは二年連続で百六十人を下回り、統廃合などの対象になった。

 白馬村と隣の小谷村でつくる白馬山麓環境施設組合の横川辰彦・白馬高校支援担当局長は「卒業後も家族や友人と訪れる交流人口が増える。地元の中学生が入学したいと思うきっかけにもなれば」と期待。ふるさと納税なども活用し、一七年度は両村が寮や塾の運営費などに一億円を支出する。生徒数は回復途上だ。

 (川合道子)

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 文部科学省によると一七年度、全国の公立高は三千五百七十一校あり、十年前より四百五校減った。今後も中山間地や離島を中心に統廃合が進むとみられ、白馬高のような取り組みを進める公立高は少なくない。

 北陸大の藤岡慎二教授は、自身が経営する教育コンサルティング会社で「高校魅力化プロジェクト」を展開。地域ぐるみで「島留学」を打ち出し生徒数の倍増に成功した島根県の隠岐島前(どうぜん)高や、広島県の大崎海星高など全国十七校に広がる。

 「地方は少子高齢化や財政難の先進地。そうした問題を考え解決につなげる力は、これからの大学入試でも求められる。高校時代を地方で過ごす意義は大きい」と藤岡教授は話す。

 

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