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高校生・大学生

<大学考 2018年問題> 国公立の学力不足

卒論を控えた学生向けに、滋賀県立大で行われた文章力を高めるための課外授業=滋賀県彦根市で

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 昨年末の中部九県大学アンケートでは、一部の国公立大から少子化で学力不足の学生が増えたとの回答があった。現場からは「理系なのに初歩的な微分もできない」「レポートが書けない」との声も。学力不足は顕在化し、学力を高める取り組みが注目される。

 「この文の主語は何や」

 今月十日朝、滋賀県立大(滋賀県彦根市)で始まった文章力を高めるための課外授業。複雑で長く分かりにくい学生の文章を見て、担当する副学長の倉茂好匡(よしまさ)さん(59)が問い掛けた。

 卒論執筆中の学生ら十一人が句読点の意味や主語と述語の関係などの基礎から復習した。「ここの接続詞は何がいいだろう」。中学生の参考書で自分たちの文章を点検。日が落ちるころ、推敲(すいこう)を重ねた文章は読みやすく整ってきた。

 「ラインばかりでメールもしないし、文章を書くのに慣れていない。この授業を受けて卒論のどこを直したらいいのか、少し分かってきた」と、工学部四年の男子学生(22)。

 倉茂さんによると、少子化でも入学定員数はほぼ変わらないために学力の低い学生も入りやすくなり、同大でも一部の学部で以前より偏差値は七ポイントほど落ちたという。学力不足の進行が激しい一部の私立大では、学力をフォローする基礎教育が重視されるようになってきたが、今後国公立大でも広がるとみられる。「うちは関西で一番入りやすい国公立大だと思う。でもきめ細かな教育で学生の力は伸びている」

 東海地方の国立大教授は「学生たちが授業内容についてこられなくなってきている。以前から使う講義ノートが三分の二しか進まなくなった」と危惧する。「学習意欲不足の学生も増えた」と話す教員も多い。

 受験者の動向に詳しい河合塾の富沢弘和・教育情報部長は「国公立大の人気は下がっていないが、地方では実質的な志願倍率がすでに一、二倍台という大学が目立ってきた」と指摘。二倍を切ると志願者の多くが入学し、選抜の意味をなさなくなるといい、別の地方国立大教授は「一倍台の志願倍率を経験したことがあるが、壊滅的な学力の学生も入った」と明かした。

 「学力不足の要因は、少子化だけでなく、複合的だ」と語るのは、教育研究者の小川洋さん(69)。高校までの教育内容の変化や、多様な人材を求める推薦入試などの導入で、必要な基礎学力を付けずに入学する学生も増えたからという。高校の物理や数学を教える国公立大も少なくない。

 そんな中、受験者数の減少が続く岐阜大(岐阜市)では約三年前から、学力レベルを客観的に把握するために「教学IR(Institutional Research)」の取り組みを始めた。個々の学生について入試の情報や普段の成績、卒業後の進路などのデータを集めて分析し、学力や教育内容の維持、向上に生かし、学生の能力の質保証につなげる試みだ。

 副学長の江馬諭さんは「十八歳人口が減れば優秀な学生の人数も相対的に減る。今は学力不足は感じないが、教学IRで学力レベルも注視し、自信を持って良い学生を社会に送り出せるよう教育していきたい」と話す。

 学力の質を保つために評価を厳しくすべきだとの声もある。「一定の学力がない学生には単位を与えるべきでない。教員全員が徹底すべきだ」「留年や退学も必要」。ベテランの二人の国立大教授は指摘した。

 今後の十八歳人口減で、問題は深刻化すると予想される。大学マネジメント研究会の本間政雄会長(69)は言う。「入学定員が多すぎるから基礎学力のない学生が入る。国公立大は定員を徐々に減らし量より質に転換すべきだ。教育は国力そのもの。大学の存在意義が問われている」

 (芦原千晶、今村節)

 

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