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高校生・大学生

<自殺防止 大学の対策>(上) 命のSOS受けとめたい

T−ACTの相談窓口で、「学生生活で悩んだ時に読む本」を手にする高橋あすみさん=茨城県つくば市の筑波大で

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 全国の大学で、この十年ほど学生のメンタルヘルスを重視し、支える動きが活発だ。相談部門を充実させ、自殺予防の啓発にも取り組む。神奈川県座間市の事件は大学生を含めた若者が被害に遭った。「SOSを発している学生たちに何とかつながりたい」。そんな思いを抱く研究者らの取り組みや声を二回に分けて届ける。

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 新入生への学生相談室のPR、クラス担任制、危険な場所へのネットや窓の鍵の設置。筑波大(茨城県つくば市)は一九七三年の開学以来、全学的に自殺防止に取り組み、注目された。「効果も出ているが、完全には防げていない」。保健管理センター・学生相談室の杉江征教授(57)は苦渋の思いを語る。

 心身の不調を見聞きしていたのに周囲が声を掛けきれず救えなかった命、休学復帰直後に絶たれた命、一方、遺書メールに気付いた友人が救った命も。「自殺を考える学生は一人でつらさを抱え、孤立している。大学カウンセラーは孤立している学生につながりたいと願っている。周りの教職員や友人が気付き、こちらにつないでもらうことと、学生生活を充実させ人への信頼感を育んでもらうことが重要だと気付いた」。約十年前から取り組むのが「総合相談窓口」と学生活動を支える「T−ACT」だ。

 総合相談窓口は学生、保護者や教職員が何でも相談できる場所。学生の出入りが多いキャリア支援室や学生部などが入る建物内に構えた。学生相談室のカウンセラーが常にいて、さまざまな困り事に対応し、各部局と連携して解決する。従来の相談室には敷居が高くて行きづらいという学生らが「家庭がしんどい」「友達がおかしい」などの声も届けるようになった。

 T−ACTでは、学生が自発的にやりたいと思ったプロジェクトを支援。専門教員が助言し、仲間集めや教職員の紹介も手伝う。学業やサークルとは別の枠組みで、学生が輝く舞台を整えたのがミソ。ゲームを用いた交流会から祭りの企画まで毎年五十件が申請される。引きこもっていた学生が自信を付け、就職活動を成功させた例もある。

 大学院生高橋あすみさん(25)はT−ACTを使い自殺予防に取り組む団体「希死回生(きしかいせい)」を設立した。昨年は冊子「re+(レタス)・学生生活で悩んだ時に読む本」を仲間と作りツイッターでも公開。明るいデザインと「悩んだ時に行く12の場所」「傾聴のすすめ」など専門的な内容にこだわり、学内に置いた千部はすぐなくなった。「死を選ぼうとする人の中には、自尊心が低いために負担になりたくないからと、悩みを打ち明けたり他者の助けを得たりすることに抵抗が強い人もいる。身近で悩んでいる人に気付いた時、自分が悩んだ時、re+がヒントになれば」

ソファや植物を置き、くつろげる雰囲気の学生相談室。奥に面談室がある=愛知県春日井市の中部大で

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 中部地方の多くの大学にも学生相談の窓口があり、各大学のカウンセラーが合同で検討会を開くなど熱心に活動してきた。

 名古屋大(名古屋市千種区)は「学生相談総合センター」を設け、心身の悩みから就職まで幅広く応じる。昨年度は学生の約8%が利用。相談数は千五百件強で十五年前の約三倍だった。

 中部大(愛知県春日井市)の学生相談室は非常勤を含め七人のカウンセラーがいて、二〇一〇年からは新一年生に対人関係やストレス対処法なども教える必修の授業を担う。最近は保護者や教職員の相談も増え、昨年は延べ二千人強が来室した。「ピンチの人だけでなく、成長したい人や自分を理解したい人も来てほしい」と佐藤枝里室長は語った。

 (芦原千晶)

 <大学生の自殺者数> 警察庁の統計では、昨年は374人。国立大学法人保健管理施設協議会メンタルヘルス委員会の調査によると、2014年度中で10万人比17・9人、大学生の死因で自殺が最も多かった。自殺率は02年度から増加傾向にあり、11年度が最も高かった。

 

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