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高校生・大学生

<スタッフが聞く> 「ヘンな論文」著者・サンキュータツオさん

サンキュータツオさん

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 一風変わった視点で研究する人たちの論文をまとめた著書「ヘンな論文」や続編の「もっとヘンな論文」が、ひそかな人気という。書いたのはお笑い芸人で「珍論文ハンター」の肩書を持つサンキュータツオさん(41)。学術的な記述にツッコミを入れつつ、面白おかしく解説するワケとは。高校生スタッフが直撃した。

 タツオさんは漫才コンビ「米粒写経」のツッコミを担当する一方、言語学の研究者としてお笑いのレトリックを解明したり、大学生に文章の書き方などを教えたりする「学者芸人」だ。

 日ごろから新しい言葉には敏感で、高校生が普段口にする「やばい」や「それな(賛同するときに使う言葉)」にも、「興味深い」と真顔で反応する。例えば「このラーメン、やばい」はおいしいという意味だが「あのモデル、やばい」では美しいという意味にもなる。「一つの言葉で文脈的にたくさんの意味を担えるという点で、非常に日本語らしい進化をしている」と解説してくれた。

 そんなタツオさんが「ヘンな」論文を収集し始めたのは大学院生のころ。大学の図書館で学術雑誌を開くと、「姫君の育て方」などタイトルからは内容が全く想像できないような論文に遭遇。「こんなことに人生の時間を割いている人がいるのか!」と衝撃を受け、片っ端から論文誌をめくるのが習慣になったという。

 これまでに集めた論文は五百本ほど。「傾斜面に着座するカップルに求められる他者との距離」「最長しりとり問題の解法」…。二冊の本には、大学に籍を置く研究者だけでなく、高校教員や中学生らの論文も並ぶ。

 お勧めの一つが、女子大生が卒業論文として執筆した「プロ野球選手と結婚するための方法論に関する研究」だ。選手の結婚年齢や相手の職業などのデータを球団別に集め、妻になる確率を上げるには何をすべきかを考察している。

 「有名人と結婚したい」と思ったことがある人は多いだろうが、その大半は憧れで終わる。だからこそ「実際にサンプルを集めて結論を導いているのは偉大。自分が気になることは何でも研究になるっていう一つの例」とタツオさん。

 突っ込まずにはいられないのが、縄文時代のクリの大きさや、カブトムシをひっくり返して起き上がる姿について調べた論文という。「クリに目を付けて研究するとは、正直負けたと思いましたね。世間からすれば『だから何なんだよ!』という結論だけど、自ら問いを立てて解くというのが研究の醍醐味(だいごみ)。それを読むことで、僕らは自分が考えもしない世界を見ることができる」とタツオさん。お笑いのようにツッコミを入れつつ解説することで「難しくてつまらないと思われがちな論文や研究のイメージを変えたい」と語った。

 高校時代は進学校のバスケットボール部に所属し、チームメートと強豪校を訪れては、どんな練習をしたら勝てるかを試行錯誤する日々だったという。「今思えば、これも学問だった」とタツオさん。「学校で習うことの多くは答えがあるけど、世の中のほとんどは分からないことだらけ。だからこそ、より確かな答えは何かと限りなくアプローチする力を身に付けるのは大切」と話す。

 最近の社会で気になるのが「自分と違う考えを遠ざける雰囲気があること」という。高校生たちに「もっと自分と考えの違う人を面白がってほしい。何でそんな発想をするんだろうと。考えが合わないから『嫌い』ではなく理解を試みると世界が広がって面白いかもよ」とメッセージをくれた。

 1976年、東京都生まれ。早稲田大大学院文学研究科日本語日本文化専攻の博士後期課程修了。オフィス北野所属の漫才コンビ「米粒写経」として活動。一橋大非常勤講師。著書に「ヘンな論文」「もっとヘンな論文」「学校では教えてくれない! 国語辞典の遊び方」(すべてKADOKAWA)など。「ヘンな論文」は25日に文庫本が発売予定。

芸人のサンキュータツオさん(中央)を取材する高校生スタッフら=東京都渋谷区で

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◆スタッフ感想

 奥野郁子(高2・愛知県長久手市) 日本語学者とはいえ、高校時代は国語が苦手だったと聞き驚いた。嫌なことは最初から諦めてしまいがちだが、「どうしてそうなのか」を大切にさまざまなことに取り組みたい。

 小野田菜緒(高2・同県豊川市) 取材を通して、ヘンな論文のように世間ではあまり話題にならないことやマイノリティーといわれる立場の人々の意見にも目を向け、それを理解することも大切だと思った。

 北村梨華(高1・同県知立市) 普段は何も疑問を持つことのないような身近なことも研究材料になるそうだ。物事を違った角度からも捉えられるように意識して、いつか論文に挑戦してみたいと思った。

 吉村歌姫(高1・三重県松阪市) 印象に残っているのが「みんながやっている安心感より、そのつまらなさに耐えられない」という言葉。つい皆と同じ方向に走りがちだが、もっと自分の個性を出そうと思えた。

 

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