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高校生・大学生

震災の経験、生かせたら 東北から移住、8人が思い語る

東日本大震災後の転校先での経験を語り合う高校生ら=中日新聞社で

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 東日本大震災が発生した3・11を前に、小中学生時代に東京電力福島第一原発事故などで愛知県に避難し、進学した高校生たちが六年間の思いを語り合った。友達との突然の別れや、転校先で「震災さえなければ」と悩んだ日々。今、「震災を経験したからこそできることがある」と前を向いている。

 集まったのは、福島県から愛知県岡崎市や名古屋市などに移り住んだ高校生七人。中日新聞の高校生スタッフとして活動する飯沼菜緒さん(一年)の呼び掛けに応えた。飯沼さん自身も、小学四年のときに住んでいた仙台市で被災している。

 福島県白河市出身の女子高生(三年)が名古屋市に避難したのは中学一年の夏。転校する直前に中学生がいじめを苦に自殺するニュースを目にし、「私も原発のことでいじめられ、屋上からダイブする(飛び降りる)末路をたどるのかなあと不安になった」と明かした。

 転校先では原発のことではいじめられなかった。でも名古屋弁になじめず、敬語を使っていたことが災いした。「キモイ」と陰口をたたかれ、学校を休みがちになった。もう治りはしたが、甲状腺の病気も見つかった。ストレスのためか放射能のためかは分からない。

 以前は、自分が生きているうちに「震災に遭うことはない」と心のどこかで思っていたが、違った。「ある日突然、人生が変わってしまうことが本当にあるんだ」

 被災者と伝えるか否かという葛藤もあった。原発から十キロ圏内の福島県富岡町に住んでいた鈴村共笑さん(一年)は震災時、海沿いの小学校に通う四年生。高台に立つ町の体育館に避難して津波は逃れたが、翌朝には「原発が危ない」。横浜市などを経由して、父親の実家がある名古屋市に逃れた。

 転校先の学校と相談し、クラスで自己紹介するときは「震災で引っ越してきた」と言わないと決めた。しばらくして福島から東京に避難した同級生をテレビで見た。原発のことでいじめられ、母親に肩を抱えられて歩いている姿だった。「私はみんなに温かく迎えてもらえた」と思った。

 一方、福島市出身の徳田洲さん(一年)は「震災のことを包み隠さず話したことで、周りと打ち解けることができた」と振り返った。名古屋市に転校する前に過ごした大阪府内の小学校で、被災した経験を作文にしてクラスで発表した。「最初はふざけていた子も真剣に聞いてくれ、最後は『頑張れよ』と肩をバシバシたたいて励ましてくれた」

 飯沼さんは「聞かれたら軽く話す程度」だったが、南海トラフなど大地震が予想される地域で暮らすうちに、「自分の体験をもっと伝えるべきかな」と思うようになった。

 学校の避難訓練では、ふざける生徒たちを注意する先生までも「おーい、しゃべるなよ」と笑っていた。実際の震災では、机の下で泣きながら揺れが収まるのを待ち、いつ来るか分からない余震におびえて過ごした。「ずっと防災意識の差にモヤモヤしていました」と打ち明けると、全員がうなずいた。「訓練は月一回はするべきだ」「ふだんから地域の絆を深めることが大切」などと意見が上がった。

 福島県いわき市で被災した砂澤祐太さん(一年)は「防災について正しい知識を身につけ、助かる命を増やしたい」と語った。同じマンションでいつも遊んでいた仲間たちは、一人、また一人と、別れのあいさつをすることもなく各地に散らばり、音信不通になった。「災害に強い街をつくるにはどうしたらいいか、勉強したいと思っています」

 (川合道子)

 

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