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高校生・大学生

高校生らドイツでモノづくり研修 名古屋市教委、同世代の訓練生と交流

 モノづくりのスペシャリストを目指す名古屋市立高校の生徒たちが、職業教育が盛んなドイツを訪れ、学校で学びながら企業で訓練生として技術を磨く同世代と一緒に実習に取り組んだ。技術力の高さや学び方の違いに「負けていられない」と心機一転、「海外で通用する技術者になりたい」と夢を膨らませている。

 グローバル社会の中、技術者を目指す高校生にも国際的な感覚を身に付けてもらおうと、名古屋市教育委員会が本年度初めて実施。八月十八日から十一日間、工業系の学科がある市立工芸高校(同市東区)と工業高校(同市中川区)の生徒二十人が、ドイツ北西部にあるニーダーザクセン州のウォルフスブルク市やハノーバー市などを訪れた。

ドイツの訓練生と実習する生徒たち=ドイツ・ウォルフスブルク市で(名古屋市教育委員会提供)

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 プログラムのメインは、世界大手の自動車メーカー「フォルクスワーゲン(VW)社」と、建設用の機械や車両などを製造する「コマツ・ハノマーグ社」での研修だ。古くから職業教育が社会に根付くドイツでは、技術者を目指す場合、日本の高校にあたる職業学校で勉強しながら週に数日、企業で訓練生として技術を磨く「デュアルシステム」で学ぶのが一般的。高校生たちは、それぞれの企業で研修中の同世代の訓練生たちと一緒に、電気配線や溶接などの実習に取り組んだ。

 そこで見たのは−。電子機械科の寺島敬吾君(工芸高三年)は、VW社の訓練生が、材料を回しながら削って加工する旋盤の作業で、指示通りの形に百分の一ミリ単位で仕上げている様子に目を見張った。「同世代でも、自分たちよりレベルの高いことを当たり前のようにやっていて衝撃的だった」と振り返る。

 機械科で学ぶ岩城諒汰郎君(工業高三年)が感心したのは、材料に穴を開けるボール盤という機械を扱う技術だ。プラスチックに穴を開ける作業に挑戦すると、目標とする直径より大きくなってしまうのに対し、コマツ社の訓練生は次々と精度の高い穴を開けてみせた。「一ミリでも違えば安全にも関わる作業。プロの職人から教わっていると聞き、技術が若い人に受け継がれているんだと感じた」

 訓練生たちが通う学校も訪れ、授業に参加。日本との学び方の違いに、建築システム科の伊藤遼君(工芸高三年)は「学習に対する姿勢を考え直さなければいけないと思った」と話す。技術系の授業では、教師は「発注者」で、生徒たちが細かな方法や手順を考案。あらゆるものをインターネットでつなぐIoT(Internet of Things)など最先端の技術を活用した自主製作もあり、「みんな向上心があって、学びを楽しんでいるように感じた。作品の完成度も高く、負けていられないと思った」。

 ドイツの制度に倣い、名古屋市教委では本年度から「デュアルシステム」を市立高校に導入している。週一日、地元の企業で学ぶ環境技術科の祖父江学人君(工業高三年)は、ドイツの同世代との交流などを経験し「これまで考えもしなかったような大きな目標ができた。今まで以上に学校や企業で積極的に学び、将来は世界で通用する技術者になりたい」と力強く語った。

◆企業実習を一層重視

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 全日制や定時制に通う高校生のうち、工業や商業といった専門学科で学ぶ生徒の割合は、一九六〇年代に40%を占めていたものの現在は18%と半減している。背景には高学歴化や少子化により、普通科と比べて専門学科が再編対象になりやすいことなどがある。

 専門学科は、モノづくりなどの実習を通して専門的な知識や技能を学べることが魅力の一つ。近年はドイツの教育制度に倣って、より実践的な技術や職業人としてのマナーを身に付けようと、長期にわたって企業で学ぶ「デュアルシステム」を導入する高校が名古屋市外にもある。

 文部科学省が二〇〇四年度に「日本版デュアルシステム」のモデル校に指定した桑名工業高校(三重県桑名市)では、地元の商工会議所と連携して受け入れ先の企業を開拓。二、三年生が週一回、年間を通じて学ぶ「企業実習」をカリキュラムに組み込んでいる。

 職業教育学が専門の寺田盛紀名古屋大名誉教授・岡山理科大教授は「現行の学習指導要領の枠組みでは限界があるが、できるだけ実習時間数を確保し、生徒の専門に合った実習内容で実践経験を積むことが大切」と話している。

 (川合道子)

 

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