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滋賀・呼吸器事件 再審決定

西山さん再審 高裁決定要旨

 西山美香さん(37)の再審開始を認めた大阪高裁の即時抗告審の決定要旨は次の通り。

 【即時抗告理由に対する判断】

 二〇一二年九月に申し立てられた再審請求で弁護人は(1)元看護助手西山美香さんの捜査段階の自白調書は信用性ないし任意性を欠く(2)男性患者が急性心停止で死亡したと認定した確定判決の根拠の医師の鑑定は信用できず、自然死の可能性がある−などと主張した。これらを明らかにするとして提出した各証拠に関し、大津地裁決定は、無罪を言い渡すべき合理的な疑いを生じさせるとはいえないとして棄却した。

 当審で弁護人は、患者が致死性不整脈で死亡した旨の主張を補充した。原審の証拠に当審提出証拠を加えて検討すると、患者の死因が致死性不整脈であった可能性は排除されず、急死の原因が酸素供給途絶にあるとする医師の鑑定などの証明力は揺らぎ、原因が酸素供給途絶と証明されないことが明らかとなった。

 【医師鑑定書などの明白性の検討】

 医師の鑑定は解剖結果のみではなく、死亡前に人工呼吸器の管が外れた状態が生じたという事情を併せて死因を判断していると読める記載をしている。確定一審での医師の証言も、解剖結果に管が外れた状態という事情を加えて死因を判断した旨を述べた。

 患者の異常発見時に、看護師らが呼吸器の管が外れていたのに気付いたという事実は確定判決で否定された。死亡したと思われた後に管をつないだという西山さんの自白に信用性が認められた。死因は酸素供給途絶にあるという医師の鑑定の推論部分はさらに慎重に検討する必要がある。

 検察官側、弁護人側がそれぞれ当審に提出した証拠からは、患者の死亡の直接の原因が酸素供給途絶による低酸素状態であるのか、致死性不整脈が生じたことにあるのか、解剖所見のみから判定できないと認められる。

 死因が致死性不整脈である可能性の程度は、明確ではないものの、無視できるほどに低い程度ではないと言える。患者の死因が酸素供給途絶による低酸素状態だったと合理的疑いなく認定するには至らない。

 【供述の信用性】

 患者の死亡への関与の有無や程度、呼吸器の管を外したかどうかなど、西山さんの供述は多数の点でめまぐるしく変遷し、真の体験に基づく供述を選別するのは困難である。自白は管を外したとする点も含め、体験に基づく供述ではないとの疑いが生じざるを得ない。

 西山さんは自白の理由として取り調べを担当していた警察官に好意を抱いたなどと供述する。西山さんが好意を抱き、信頼していたことも間違いがないと言え、警察官との関係を維持しようとして虚偽の自白をし、弁護人を信用しきることができないまま維持したとも考えられなくはない。

 確定判決が基礎とした自白は、それ単独で患者が酸素供給途絶状態により死亡したと認め得るほどに信用性が高いとは言えない。酸素供給途絶状態が生じたために死亡したとあることが合理的疑いなく認められるとまで評価できない。

 【結論】

 患者の死因が酸素供給途絶にあるとする確定判決が依拠した医師の鑑定などの証明力は減殺され、患者が自然死した合理的な疑いが生じたというべきである。西山さんが犯人であると認めるには合理的な疑いが残っているといわざるを得ず、原決定を取り消し、本件について再審を開始することとする。

 

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