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滋賀・呼吸器事件 再審決定

<解説>供述調書の矛盾を無視

 最高裁で十年前に有罪が確定したこの裁判を疑問に思うきっかけは、西山美香さんが両親へ書いた手紙だった。「殺(こ)ろしていません」(原文のまま)。つたない文字で三百五十通余に及ぶ獄中からの訴えは、心の底からの叫びだった。分析した専門家は、特徴のある誤字から生来の「弱さ」を見抜いた。取材班は四月、弁護団、専門家の協力で西山さんの精神鑑定を獄中で行い、彼女が「防御する力が弱い」供述弱者とわかった。

 十三年前、密室で何が起きたのか。大声で「なめるな」と脅され、机をたたかれ、死んだ患者の写真に後ろから顔を押しつけられたという。「呼吸器のアラーム(警報音)は鳴ったはずや」。怒鳴る刑事に耐えきれず「鳴りました」と言わされたことが、患者の死亡を“事件化”する端緒。撤回しようと真夜中に警察署へ手紙を届けても、はねつけられた。パニックになると自暴自棄に陥りやすい障害の特性が「自分が呼吸器のチューブを外した」と言わせてしまったのではないか。

 刑事の脅迫、誘導、自白時のうつ状態の診断書、供述調書の矛盾は法廷で無視されてきた。指紋などの物証、目撃証言は何一つない。誤った事実を前提にした司法解剖鑑定書も見過ごされた。自白のみで構成した不自然な捜査側の主張がまかり通ったことが、不思議でならない。

 物証のない計画殺人のシナリオになぜ検察は同調したのか。その主張を一審から最高裁までの裁判官たちはなぜ、受け入れたのか。構造的な問題があるのなら、徹底的な解明が必要だ。西山さんだけの問題ではない。(編集委員・秦融)

 

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