経済部の記者が狙う特ダネの一つが有力企業のトップ人事。最高機密であり、企業側のガードは堅い。マスコミ各社の取材競争も激しさを増す。
かつて私が地方勤務をしていたころの話。ある日の夕方、地元大手の金融機関トップが交代するらしい、との情報が伝わった。確認に走ったものの、なかなか感触がつかめない。
本人に直接当たるしかないと、自宅へ。「人事は話せない」。インターホン越しに取材を拒否された。翌朝、ライバル紙が朝刊の一面ででかでかと報じていた。この「抜かれた」思い出は一生忘れられない。
同じ失敗を繰り返したくなかった。「抜く」ために、担当した企業は業績や経営戦略だけでなく、トップの性格や社内外の人脈など多角的に取材するよう努めた。その結果、一矢を報いることもできた。
最近、異例の人事が相次いだ。キヤノンは経団連会長まで務めた御手洗冨士夫会長(76)が社長に復帰し、第一線に立つ。テレビ事業の立て直しが急務のソニーは、ゲーム事業で手腕を発揮した子会社出身の平井一夫副社長(51)に託す。
人事の季節。記者たちがどんなドラマを見聞きして、記事にするのか楽しみだ。 (山上隆之)
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