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舌はないけど

(22)仲間は特効薬 同じ方向見て歩く幸せ

いつも笑顔の渡辺さゆりさん(左)と一緒に=名古屋市内で

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 わが同志「ガンカンジャー」こと渡辺さゆりさん(48)=長野県飯田市=の話が、三日の中日新聞朝刊一面(名古屋本社発行分)に大きく載りました。

 テレビの戦隊ヒーローのように力強く、勇気と希望を持って闘病しようと、楽しい愛称を考えたさゆりさん。孤独になりがちな患者らがつながる場をつくり、患者力を高め、都会と地方のがん医療の格差を縮めていこうという活動が詳しく紹介され、とてもうれしくなりました。

 さゆりさんとの出会いは、二〇一五年の秋、名古屋市の愛知県がんセンター中央病院。私が手術を終えて長期入院中に、さゆりさんはステージ4の大腸がんの切除手術のため入院してきました。すぐに仲良くなりました。私たちが「マダム」と名付けた先輩患者さんと三人で毎日、体力回復のために一緒に歩いたり、洗濯に行ったり、談話室で「女子会」と称しておしゃべりをしたりしていました。

 さゆりさんは余命宣告を受け、今後の治療は延命措置という状況でしたが、そんな大変なことも穏やかな笑顔で話してくれました。私が家族に心配をかけたくなくて言えなかったつらい気持ちも、やさしく受け止めてくれました。

 私は放射線治療、さゆりさんは抗がん剤治療の副作用でお互いに一番つらかった時も、支え合って乗り越えることができました。彼女の体調が悪くて動けないときは、代わりに洗濯に行ったり、病室を何度も訪ねたりしました。

 私たちが病棟の廊下を歩いているとき、さゆりさんの主治医が「抗がん剤、効果があったよ」と検査結果を教えてくれ、私は大泣き。さゆりさんは「みんなと過ごせる時間が少し延びてうれしい」と、ふだんと変わらぬ笑み。本当に強くてしなやかなガンカンジャーです。私よりもっと大変な状況の人が笑顔で頑張っている。その姿に「私は大丈夫、たいしたことはない」と思え、前を向いて歩く力をもらえました。

 退院して一緒に歌舞伎を見に行く約束を果たし、地震後の熊本にも二人で行きました。東京でのセミナーもご一緒したり、お互いの地元の患者会にも参加したり。同じ方向を目指して歩く幸せを感じています。「仲間は最高の治療薬」と、さゆりさんは言います。仲間とたくさん話し、笑い、学ぶことの大切さを実感する毎日です。

 あらい・りな 1974年生まれ。岐阜県在住。2015年に腺様嚢胞(のうほう)がん(ACC)で舌を切除。闘病とリハビリを続けている。

 

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