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舌はないけど

(20)目標を定める 退院後が本当の闘い

 人生二度目の講演をしました。昨年末、名古屋市緑区の南生協病院で開かれた市民セミナーの講師です。

 初回は二年前で、嚥下(えんげ)機能がテーマ。今回は「舌はないけど−がんでも自分らしく生きる」というお題でした。主催者から「その人らしさを医療がどうサポートするか、思いを語ってほしい」とリクエストされ、闘病を通じて感じたことを本音で話しました。仲間もたくさん来てくれて、安心して話せました。

 病気の話を深刻に語るのは嫌なので、いくつかネタを仕込みました。舌とあごの骨を切除した手術の直後、むくんだ顔の写真をスクリーンに映してから「今はすっかり元通りになりました」と美人女優の北川景子さんの写真を出したら、たくさん笑っていただけました。ファンの方、ごめんなさい。

「本当の闘いは退院後」と講演=昨年12月、名古屋市緑区の南生協病院で

写真

 講演で強調したのは「本当の闘いは、退院後に始まること」です。私の場合は職場復帰を目標に闘病していて、リハビリのスタッフがメニューを考えてくれました。「職場の人とコミュニケーションを取れるように」と、マウスピースを使った発音訓練を続けました。舌の代わりに「たちつてと」は下唇をかみ、「かきくけこ」は喉をすぼめて−といった練習。おかげで、何とか理解してもらえるようになりました。

 また、手術の影響で右腕の可動域が極端に狭かったのですが、「高い所の物を持てないと仕事でも不便だろうから」とトレーニングを受けました。毎回、激痛だったけれど、今は真っすぐ挙手することができます。「ここまで回復した人は初めて」と驚かれました。

 つらくて長いリハビリでした。でも、自分がこれからどんな生活を送りたいかを伝え、担当スタッフと一緒に考え、オーダーメードの医療に取り組んだからこそ頑張れたし、成果を上げることができたと思います。食事も、歯科衛生士さんや患者会「つばめの会」の仲間と相談しながら努力し、食べられるものを増やしていけました。

 入院中はいろんな面で守られ、支えられていますが、退院後はそうはいきません。社会生活を送るための支援はまだまだ不足しているし、目標があいまいだと、支援をうまく利用できない場合も多いです。だからこそ入院中から「これからの目標」を定め、相談し、納得して取り組むことが大事だと思うのです。

 

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