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舌はないけど

(17)味覚異常 のどの奥で感じた喜び

 抗がん剤の副作用には、脱毛、吐き気、口内炎、手足のしびれなどいろいろありますが、私が最も苦しんだのは、味覚異常と食欲不振でした。

 味の感じ方が変化して、水やお茶はまるで泥水を飲んでいるよう。温かいおそばのだし汁は、まずくて吐き出してしまったほど。焼き魚も臭いで気持ちが悪くなりました。「おなかがすいた」という感覚も消えてしまいました。

 それでも食べられるものを入院中にいろいろ試してみたところ、からい、すっぱい、しょっぱいなど、味が濃いものは大丈夫だと分かりました。カレーライス、マーボー豆腐、ソース焼きそば、名古屋名物のあんかけスパゲティ、塩ラーメンなど、自宅から持ってきたレトルト食品を温めたり、院内のコンビニで買って食べていました。飲み物では、なぜか牛乳入りコーヒー飲料をおいしく感じ、毎朝買っていました。いつも考えていたのは「退院したら、何を食べようか」。ウナギ、てんぷら、ニンニクたっぷりの「ベトコンラーメン」という個性的なラーメンなど、濃い味のものばかりでした。

体調不良の誕生日。仲間からのお祝いカードに笑顔=10月、名古屋市千種区の愛知県がんセンター中央病院で

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 体重も最大で五キロ減ってしまい、二年前に造った胃ろうで栄養剤を入れたりもしました。困ったのは、体に力が入らないこと。階段を上れなくなったり、重い物を持てなくなったり、ペットボトルのふたを開けられなくなったりしました。

 こんな状態になって、新たな発見もありました。それは「舌がなくても、味覚異常ってあるんだ」ということ。味を感じる味蕾(みらい)細胞の大多数は舌の粘膜にあり、ごく一部がのどの奥の軟口蓋(こうがい)にあるそうです。舌を切除した後の私は、それまでの記憶を元に味を感じていたのかと思っていたのですが、そうではなかった。軟口蓋が十分に機能していたから、味覚異常も起きたわけです。人間の体って本当に神秘的ですね。

 抗がん剤投与の最終クールで入院中の十月二十一日は、私の四十四歳の誕生日でした。体調は今までで最悪。体力低下にだるさも加わって朝から寝ていました。妹がせっかく持ってきてくれた高級カレーとカキフライも、少し口にできただけでした。それでも、岐阜県高山市の闘病仲間からバースデーカードとプレゼントが届き、笑顔になりました。こうやって仲間たちに支えられ、闘病してきたのだと、あらためて感じました。

 

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