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舌はないけど

(16)CVポート 皮下に安全な点滴基地

 寄付するために髪を切り、生まれて初めての金髪ショートで気合たっぷりで臨んだ抗がん剤治療。副作用のほかに、気掛かりなことがありました。

 私は、腕の血管が細くて分かりにくいため、針の留置が難しいのです。これまでも栄養剤や痛み止めなどを点滴するたびに、針が抜けて漏れたりしました。抗がん剤は強い薬なので、漏れたら大変。ひどい時は治療を中断しなければならないと聞いていました。

 そこでCVポート(皮下埋め込み式ポート)の利用を考えました。鎖骨の下あたりに埋め込む硬貨大の“点滴基地”で、専用の点滴針を使って薬剤を投与します。ポートからは太い血管へチューブがつながっていて、安全に点滴できるのです。確実に針が入り、投与中も両腕が自由に使えるので、とても魅力的に思えました。名古屋市でがん患者さんの集まりに参加し、抗がん剤体験のある先輩たちの話をうかがい、私にはメリットが大きいと思ったので、薬物療法部の先生にお願いしました。

 五月下旬、抗がん剤投与の前日に入院しポートの埋め込み手術を受けました。この時も点滴をされたのですが、腕にいい血管が見つからず、手の甲の血管に針を刺されました。やはり私にはポートが必要なのだと再確認しました。

ピンクの抗がん剤・ドキソルビシン=5月、愛知県がんセンター中央病院で

写真

 痛み止めとともに眠くなるお薬も投与されたのですが、なぜかまったく眠くならず手術の間、ずっと目を開けて様子をうかがっていました。カテーテルの位置を確認するコンピューター断層撮影(CT)の時も、処置台の上で首を曲げて先生と一緒にモニターの画像を確認しました。術後の処置台からストレッチャーへの移動も自力。こんな患者は珍しいそうです。

 翌日、私の病室にはサバイバー仲間や親友がお見舞いに来てくれて、とてもにぎやかな中で抗がん剤治療が始まりました。最初に吐き気止めを飲み、電解質などを補給する輸液に続いて、ピンク色の抗がん剤ドキソルビシン。利尿剤を経て透明のシスプラチン。最後に、薬を体外に早く排出するための輸液。計六時間のコースです。

 仲間のおかげで緊張も不安もなく、抗がん剤と一緒に記念撮影して楽しく過ごせました。ご飯も普通に食べられました。でも、平和な日々は長くは続きませんでした。

    ◇

 荒井里奈(あらい りな) 1974年生まれ。岐阜県在住。2015年に腺様嚢胞(のうほう)がん(ACC)で舌を切除。闘病とリハビリを続けている。

 

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