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舌はないけど

(15)脱毛前に髪を寄付 ついでに金髪ショートに

脱毛前に髪を寄付

ついでに金髪ショートに

 「ヘアドネーション」(髪の寄付)という活動を知ったのは、三年前。舌の切除手術後の入院中でした。一般市民から髪を寄付してもらい、小児がんなどのお子さんに医療用ウイッグを無償で贈る活動です。

 私はそれまで献血にはしばしば協力していたのですが、がんの診断を受け、治療した人は経過が良好でも献血はできません。でも、これならできると思いました。いずれは抗がん剤治療に入るだろうし、副作用で脱毛する前に少しでも役に立てていただこうと、髪を伸ばしてきました。

ドネーション用に髪を切って、爽快な気分=5月、岐阜県下呂市の美容院で

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 思っていたより早く、今年五月末から抗がん剤治療を受けることになりました。投与されるのは、シスプラチンとドキソルビシンで、どちらも脱毛の副作用があります。髪の長さは、目安の「三十一センチ以上」に少し届かなかったのですが、大阪市北区の女性用ウイッグ製造販売会社が展開するプロジェクト「つな髪」では、十五センチから受け付けてくれるので、迷わず手続きをしました。病院で治療の日程が決まった帰り道に、行きつけの岐阜県下呂市の美容院に立ち寄って予約しました。事情を説明したら、快く引き受けてくれました。

 髪を部分ごとに分け、長さをそろえてカット。切るたびに、頭が軽くなっていき、新しいスタイルへのワクワク感が高まっていきました。「寄付のための切り方ガイド」では、三〜五束に分けるのが通常と書いてありましたが、私は髪がとても濃くて、何と十束になりました。一番長いトップの部分は三十一センチあり、伸ばし続けたかいがあったとうれしくなりました。持ち帰り、「つな髪」へ送りました。

 美容師さんにリクエストした髪形は金髪のベリーショート。黒髪に比べ抜け毛が目立ちにくいし、若いころにあこがれていたんです。好きなロックバンド「筋肉少女帯」の影響もあったようです。仕事を辞めて、髪の制約もなくなったし、ひと月後には全部抜けるのだから思い切って楽しんでしまおうという感じです。両親はあきれていたけれど、友人・知人たちからは好評で、私もとても気に入っていました。

 入院し、ナースステーションで帽子を取って「お世話になります」とあいさつしたら、なじみの看護師さんもびっくり。主治医も「思い切ったね」と笑ってくださり、気分も明るく治療に向かいました。

    ◇

 荒井 里奈 1974年生まれ。岐阜県在住。2015年に腺様嚢胞(のうほう)がん(ACC)で舌を切除。闘病とリハビリを続けている。

 

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