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舌はないけど

(13)頭部の放射線照射 うれしい「見込み違い」

 脳神経に転移したがんの治療で三月、愛知県がんセンター中央病院(名古屋市千種区)で放射線治療を受けました。

 実は、三年前に舌を切除した後にも、放射線治療を受けており、そのときは首から口腔(こうくう)内にかけて三十回、計六〇グレイの照射でした。唾液をのみ込むこともできなかった時期で、照射のために頭部を固定されるのが、とても怖かったのを覚えています。

 今回は、一回だけの照射で一気に二〇グレイという強い治療でした。とても難しい場所に転移したため、何度も照射するのは危険だったそうです。

 頭部の放射線治療には「シェル」というお面のような固定具を使います。顔や頭の形に合わせて事前に作っておき、それをかぶった状態で台に固定されるのです。せっかくの体験を記録しておこうと、放射線技師さんにお願いして、治療前のシェル姿の自分を撮影してもらいました。

脳神経に転移したがんを退治するため、固定具を付けて放射線治療に臨む=名古屋市千種区の愛知県がんセンター中央病院で

写真

 赤いレーザーを当てながら、治療台の位置を調整。まずはCT画像を撮影し、いよいよ本番です。ビーという機械音を立てて、照射装置のアームがゆっくり動き、私の頭の上を横断していきます。かすかに鼻に金属の臭いを感じました。いったん音が止まり、台の位置が変わり、照射面もカシャカシャと操作して、反対方向からアームが動いて再び照射。

 約二十分後、「お面を外しますね」の技師さんの声で、治療が終わったことを知りました。病室に戻り、休んでいたら、患部の痛みと吐き気で目を覚ましました。薬を処方してもらっても治まらず、つらくて親友に泣きながら電話しました。「仕方ないよ」と励ましてくれた親友は、翌日お見舞いに来てくれて、本当にうれしかったです。

 照射した部分の髪の毛もごっそり抜けて「治療前の説明と違う」と不満だったのですが、それ以上に思いがけない“見込み違い”もありました。

 一カ月ほどたったころから、物がダブって見える右目の複視の症状が和らぎ、眼帯が必要ないほどに回復したのです。先生たちも、これにはびっくり。まひしていた視神経が、がんの縮小とともに復活したようです。今後、視力が徐々に低下して失明するかもと言われていますが、今のところ兆候はありません。やってみないと分からないのが、希少がんですね。

    ◇

 荒井里奈 1974年生まれ。岐阜県在住。2015年に腺様嚢胞(のうほう)がん(ACC)で舌を切除。闘病とリハビリを続けている。

 

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