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舌はないけど

(5)つばめの会 患者仲間に希望もらう

 「つばめの会に参加してみたら?」と両親に勧められたのは、切除手術から一カ月がすぎたころでした。

 つばめの会とは、物を食べたり飲み込んだりする嚥下(えんげ)機能に障害がある患者の会で、入院先の愛知県がんセンター中央病院(名古屋市千種区)で毎月開かれていました。

 当時の私は、鼻からチューブで栄養剤を入れるのが食事のスタイル。一食に二時間かかりました。声を発することもできず、「ブギーボード」という電子メモパッドで筆談していました。お昼の栄養剤をチューブで入れながら家族と一緒に会場に行きました。

 舌を切除した患者さん仲間と会ったのはこれが初めて。まず驚いたのは、楽しそうにおしゃべりをされていることでした。ここまで回復するんだと感激しました。

 うち一人の患者さんは「いつも常食(普通のご飯)だよ」と言います。えっ、舌がないのに、普通のご飯が食べられるの? どうやって? ブギーボードで質問すると「だって、歯があるもん」。すごい。このうえない衝撃でした。

 会には、院内の摂食・嚥下障害看護の認定資格を持つ看護師や、歯科衛生士、管理栄養士、調理師も参加していました。管理栄養士からは流動食の作り方などを教えてもらいました。

 嚥下障害の患者は摂取カロリー量が少なくなりがちなので、カロリーの高いオリーブオイルや生クリーム、マヨネーズを使う▽調理に手間をかけないように、缶詰やレトルト食品も活用する−などとても具体的でした。試食用のおかゆ、煮込み、汁物なども用意してありました。私は食べることができないので、両親や妹たちが代わりに味見をしました。その中で、味付けの話題になりました。

 「舌がないんだから、味付けなんて必要ないのでは?」と尋ねたら、歯科衛生士の長縄弥生さんが「味はわかるよ。喉の奥でも味は感じるんだよ」。またまたびっくり。食べることが大好きな私にとって、大きな喜びでした。

 こうして先輩の患者さんの体験をうかがって「私も頑張れば、こんなふうになれるんだ」と思ったこと、専門職の方に相談して希望がわいてきたことで、患者会の大切さを知りました。そして、早く元気になってだれかの役に立ちたいと思うようになりました。以来、毎月欠かさずつばめの会に参加し、つらくて長いリハビリの大きな支えになりました。

シリンジを使って、水を飲む練習。つらいリハビリに、つばめの会の存在は大きな支えになった=2015年10月、愛知県がんセンター中央病院で

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 荒井 里奈 1974年生まれ。岐阜県在住。2015年に腺様嚢胞(のうほう)がん(ACC)で舌を切除。闘病とリハビリを続けている。

 

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