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舌はないけど

がんと闘う日々 会話も食事も楽しみたい

 先月十八日、愛知県がんセンター中央病院(名古屋市千種区)で「いつまでも食べる楽しみを支えたい」と題した愛知県歯科衛生士会主催のシンポジウムがあり、パネリストとして参加しました。

 こんなところに登壇するのは、生まれて初めて。しかも私は舌がない。リハビリで、かなり話せるようになった今も、か行・た行・ら行の発音ができません。声だけでは伝わらないだろうと、不慣れなパワーポイントで資料を作りました。「どうせなら、笑って聴いていただけるものに」と、アイドルやアニメキャラを登場させたりして、ネタを仕込みました。

シンポで闘病体験を話す荒井里奈さん=名古屋市千種区の愛知県がんセンター中央病院で

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 家族、親族や友人たちも来てくれて心強かったけれど、思ったほど笑いは取れませんでした。みんな静かに真剣に聴いてくださり、中には泣いてくださった方もいたそうで「えっ、泣くポイントなんてあったっけ」と驚きました。

 発表の内容は、私の闘病と「食のバリアフリー」への思いです。三年前、四十歳のときに左の舌下腺に腺様膿胞(のうほう)がん(ACC)という希少がんが見つかり、このシンポがあった病院で舌の大部分と首のリンパ節、下顎骨(かがくこつ)の一部を切除しました。放射線治療も受け、七カ月入院しました。手術前の説明では「もう話すことはできない。ご飯もペースト状のものを、器具でのどに流し込むことになる」とのこと。長くてつらい闘病生活でしたが「もう一度仕事をしたい」とリハビリに励みました。

 予想外に、会話は順調に回復しました。ただ「口から食べる」はハードルが高く、胃ろうを造っての退院でした。それでも岐阜県高山市の職場に戻って、たくさんしゃべったり笑ったりしたことが、いいリハビリになり、食べられるものが増えていきました。今は、胃ろうのお世話にならずに、食事を楽しんでいます。私たちのような嚥下(えんげ)障害への理解が深まり、患者が気軽に外食を楽しめる社会になればと思っています。

 がんとの闘いはまだまだ続きます。昨年一月に、肺への多発転移が判明。今年に入って、右目に異常を感じ、脳神経に転移したがんが、視神経に影響を及ぼしていることが分かりました。今は眼帯を着けて生活をしています。さらに、首の神経への転移も見つかり、シンポの四日後から、再び入院しています。

 これから、どんなことが起きるか分からないけど、常に自分らしい人生を歩みつつ、多くの方たちを元気づけられる連載にしていきたいと思います。ご愛読をよろしくお願いします。

  (希少がんACCサバイバー)=次回は十七日。

 

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