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青く、老いたい

第222回 熊本地震・Mさんの1年

 今日(16日)で、熊本地震の本震から1年。朝刊6面の「世談」というコラムを書きました。記事の主役・Mさんはかつて紙面で紹介したことがある方ですが、今回は匿名にさせていただきました。被災地では、表面的な統計数字には表れないさまざまな苦しみがあること、その中で精一杯がんばっている人たちがいることを伝えたいと思って書きました。紙面のコラムをそのまま紹介します。

避難、介護、暗転

 熊本市内の仮設住宅に暮らす女性Mさん(51)が倒れたのは、昨年11月のこと。母親と買い物に行った帰りに、仮設住宅前の駐車場で突然、意識を失った。脳出血だった。

 Mさんの自宅は1年前の熊本地震で全壊。同居の父は脳梗塞の後遺症があり、母は初期の認知症。大変な避難生活の中、Mさんは医療福祉のサービスをうまく使い、きめ細かな介護を続けていた。その姿を紙面で紹介してわずか1ヵ月後。信じられない暗転だった。

 翌月、入院先を見舞うと、寝たきりで左手がわずかに動くだけだった。支えてきた両親は施設へ入所。本人のリハビリも先が見えない。涙を流すMさんに慰めの言葉が見つからなかった。

 以来ずっと気にかかっていたが、先週主治医に経過を尋ねてみて驚いた。脳の血管を改善する手術を受けた後、歩行訓練を頑張り、今では四百メートルも歩けるという。やっぱり、すごい人だ。

 震災の被災者が健康を害するケースは多い。被災地には、表向きの被害の数字だけでは見えない悲劇がたくさんある。そして、くじけずに頑張る人たちがいる。

 震災を過去の問題にせずに、今を見つめていくことが大事だ。(編集委員 安藤明夫)

 来月、九州を訪ねる際にMさんのお見舞いに行ってこようと思っています。

 

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