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小児がん新薬  早期承認目指す

全国医療者連携のNPO

 がんの子どもを救おうと、全国の医療者が連携して新しい治療法の確立を目指すNPO法人「日本小児がん研究グループ(JCCG)」(事務局・名古屋市)の活動が、少しずつ成果を上げている。疾患の種類が多く、患者が少ないために新薬の開発や研究が進みにくい中、医療者同士で協力して臨床試験を進めたり、国や製薬会社などに働き掛けたりして、早期の新薬承認につなげようとしている。 (編集委員・安藤明夫)

神経芽腫など小児がんの薬剤開発をテーマにした意見交換会=9日、東京の国立がん研究センターで

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 「患者の数が少ない、予算がない、開発しても収益にならない−。そんな悲しい言葉を、子どもの命を前に受け入れることはできない」

 JCCGなどが中心となり、九日に東京で開かれた小児がん関係者の意見交換会。患者団体「神経芽腫の会」共同代表の浦尻みゆきさん(49)は厚生労働省や医薬品の承認審査を担う「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」などの担当者、研究者らを前に、欧米で治療薬として使われている「レチノイン酸」の国内承認の必要性を訴えた。

 神経芽腫は神経細胞にできるがんで、主に幼児期に発症。発症五年後に生きている確率は40〜50%と低く、再発すると治療成績はさらに悪くなる。

 一方、欧米では五年後の生存率は60〜70%で、その差の主要因とされているのがレチノイン酸。にきびの治療薬として開発されたが米国での研究で神経芽腫にも効果があることが確かめられ、欧米では未承認の治療薬として使われている。

 浦尻さんの長女は五歳のときに発症し、小学生のときに再発。レチノイン酸は日本では新薬承認の対象となっていないため、個人輸入して使用した。居住する関東地方から、専門医のいる金沢大病院まで通うなどして治療を続け、長女は今、高校生にまで育った。

 レチノイン酸の使用にかかった費用は三十万円。国内で承認されていないため、用量や使用期間なども定まっておらず、小児がん治療の分野で長年の懸案となっている。

 JCCGはレチノイン酸の承認申請を続けており、意見交換会のテーマの一つに提示。昨年に閣議決定された第三期がん対策推進基本計画で小児がんの治療推進が盛り込まれたこともあり、PMDAが前向きに検討する意向を示した。

 浦尻さんは「これまでと違う手応えを感じられました」と期待する。

治験で相互協力 国、企業に働き掛けも

 小児がんは種類が多い一方、患者数の少ない疾患が多く、製薬企業が積極的に投資したがらない。疾患の専門家も少ないため、単独での治療法の研究には限界がある。

 このため研究者が連携しようと、白血病の研究グループなどが母体となり、二〇一四年にJCCGを設立。全国の大学、病院など約二百施設の研究者らが参加し、新薬の候補となりそうな薬などの情報交換や医師主導による新薬の臨床試験(治験)の提案、治験に参加する患者の募集、国への研究費の申請などをしている。

 早期相試験(臨床試験の初期段階)の分野の委員長を務める小川千登世さん(54)=国立がん研究センター中央病院小児腫瘍科長=によると、ゲノム医療の進歩とともに、がんの遺伝子変異の特徴に沿って、候補となる薬を探す研究手法が拡大。「効率的に研究を行う上で、全国規模のネットワークの力は大きい」と話す。

 大人には使われている薬が、子どもには承認されていない例も多いといい、現在、子どもを対象にした臨床試験や治験などにJCCGが協力。「関わった薬剤で六つか七つ、承認の見通しがついた」と話す。

 また、大人向けと子ども向けを同時に行う欧米の治験にも参加。製薬企業のコストを抑えつつ、国内承認を加速させる取り組みも始まっている。

 小川さんは「新しい薬剤は副作用の少ないものもあり、小児がんの子が服用を続けながら、学校で部活もできる例も出ている。より多くの薬剤を子どもたちに届けていきたい」と話す。

 

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