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医療、介護の本質訴え 安田講堂事件50年 団塊世代の医師ら集い

次世代も参加 超高齢社会に提言

 東京大医学部の自治会闘争が発展した東大紛争の安田講堂事件=メモ参照=から五十年。医療制度を含む社会のあり方を問い掛けた当時の学生たちの中には、医療や介護の世界で新しい流れをつくり、地域で活躍してきた人も多い。通底するのは、既存の権威を疑い、本質を求める姿勢だ。闘争に参加した団塊の世代が七十代を迎える中、同講堂で十二日、多世代の医療、介護関係者が集い、超高齢社会の課題を改善する道を探った。 (編集委員 安藤明夫)

学園紛争の歴史に名を刻む安田講堂で開かれた集い=いずれも東京都文京区の東大で

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 集いは、NPO法人「在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク」(東京)と、地域医療に取り組む医師らでつくる「地域医療研究会」が「団塊・君たち・未来」と銘打ち、開催。闘争の当事者や影響された世代、闘争を知らない若い世代の医療、介護関係者ら約五百人が参加した。

 同研究会は、東大紛争を主導した学生組織「東大全共闘」のリーダーで、長野県茅野市の諏訪中央病院長を務めた故・今井澄さん(元参院議員)らが設立。集いに出席した同病院名誉院長で作家としても知られる鎌田実さん(70)は東京医科歯科大一年のときに紛争に参加し、卒業後は同病院で今井さんとともに地域医療に取り組んできた。

健康民主主義を説く鎌田実さん

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 長寿県の同県も、当時は脳卒中の多発地域。病気になると入院し、病院で死を迎える高齢者が増える中、夜に各地の公民館を回って健康講座を続け、在宅で療養したい住民の思いを専門職が支える「地域包括ケア」の原型を築いた。

 「健康民主主義」という言葉を掲げ、チェルノブイリ原発事故で「死の灰」を浴びた子どもたちの支援活動に参加した日本人看護師の行動を紹介。死の迫った少年が食べたがったパイナップルを求めて極寒の貧しい街を探し回り、母親に深く感謝されたという。「自分の力の一部をだれかのために使うこと、自分と相手の健康や命の大切さを考えていくことが社会の平和につながる」と提言した。

 「生活リハビリ」の運動で知られる広島県呉市の理学療法士三好春樹さん(68)は、東大紛争と同時期にベトナム戦争への反戦デモに参加したため高校を退学に。その後勤めた特別養護老人ホームで「病院から送られてくる高齢者がみなおむつをし、おびえた表情だった」ことに疑問を抱いた。

 おむつを外し、身体抑制の防止に尽力。「人間学を根拠とした認知症ケア」を打ち出した。施設の認知症高齢者で、暴れるなど問題行動の原因は六割が便秘で、次いで脱水、発熱などだったといい、「問題行動という形で高齢者はコミュニケーションしているのに、医療者はそれを拒否している」と厳しく批判した。

 次世代からも意欲的な発表が相次いだ。

 ベストセラー「下流老人」の著者で、埼玉県の生活困窮者支援のNPO法人「ほっとプラス」代表理事藤田孝典さん(36)は「貧困状態の高齢者が増え、医療・介護にお金を使えないために、重くなってかかる人が相次いでいる。年金の支給額の低さは違憲状態とも言える」と指摘。「貧困は自己責任として権利要求する動きが起きない。学生運動世代の人たちが立ち上がってもいい」と呼び掛けた。

 千葉市の淑徳大総合福祉学部教授結城康博さん(49)は、介護職に就いた若者が高齢者の暴言に傷ついて離職するケースが多いと紹介。「介護を受ける側のマナー」の問題を指摘した。

 座長の一人で、名古屋市の医療法人「生寿会」理事長亀井克典さん(61)は、闘争世代の医師とともに、へき地医療や在宅ケアに取り組んできた。

 先輩からは患者と対等な立場で医療に臨む姿勢を学んだといい、「一部の医療機関、福祉施設でみられる患者様、利用者様といった呼び方に違和感を感じる。『さん付け』で呼ぶことで、対等なパートナーシップを築き、一緒に努力していくことが大事」と話した。

 【東大紛争・安田講堂事件】 医学部の自治会などが、卒業生(インターン)の無給労働に反対した闘争が激化し、東大の安田講堂を占拠。事態が長期化する中、1969年1月18〜19日に大学側の要請を受けた警視庁の機動隊がバリケードを撤去。立てこもった学生ら633人が摘発された。その後も混乱は続き、この年の東大入試は中止となった。

 

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