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 広がる「メディアドクター」   

記事の評価を発表する参加者ら=名古屋市中村区の愛知大で

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医療報道 「診断」し評価

質向上へ専門家ら議論

 質の高い医療や健康情報の報道につなげようと、有志の医療従事者やジャーナリストらが実際の記事を評価したり、議論したりする取り組みが広がりつつある。「メディアドクター」と呼ばれ、研究会の会合が昨年12月、中部地方では初めて開催された。成果を市民とも共有するため、評価結果の公表も目指している。 (小中寿美)

 「勉強している人には分かるかもしれないが、一般の市民には分かりにくい」「治療の効果があると、断定的に表現している」

 名古屋市の愛知大であったメディアドクター研究会(東京)の“中部版”。新聞に掲載された糖尿病の治療法に関する記事に、参加した約四十人から率直な意見や批評が飛んだ。

 記事は、生活習慣などが原因の2型糖尿病について、血糖値や血圧といった目標値を厳しく設定して治療すると、脳卒中などの合併症の予防に一定の効果があったとする大学などの臨床研究結果を報じた。元の発表文も配られ、六グループで評価、議論した。

 医療ジャーナリストで、研究会幹事の北沢京子・京都薬科大客員教授(57)=健康情報学=は、発表文の中で合併症の発生率を示す棒グラフが下向きの矢印(→)で表現されていることを挙げ、「合併症の抑制効果を強調している」と指摘。「発表文に誇張があると記事も引きずられやすい。報道発表は結果をよく見せる傾向があり、批判的に読む力が必要」と説明した。

 メディアドクターは二〇〇四年にオーストラリアで始まり、米国、ドイツ、インドなどへ広がった。日本では東京大で行われた医療政策の人材育成講座の受講生が中心となり、〇七年に研究会を発足。隔月でテーマを決め、関連記事を評価している。

 記事を評価するのは、患者や市民にとって有益な情報とは何か、共通認識を持てるようにするため。記事ごとに科学的根拠の程度や副作用などへの言及といった十項目の指標で「○(満足)」「×(不満)」「NA(評価の対象外)」のどれに当てはまるかを選び、意見を出し合う。実際に記事を書いた記者に参加してもらったこともある。

 製薬企業の社員や図書館司書、患者支援者らも加わり、現在の会員は約四百人。東京を中心に六十一回の定例会を開き、評価した記事は二百本以上に上る。

 同会幹事長で、帝京大医学部准教授の渡辺清高さん(47)は「肩書をおろし、個人として議論する。立場の違う人から生の声を聞くことで、記事作りの参考になり、情報の読み解き方を学ぶ場にもなっている」。医療機関の広報担当者が記者向けの資料作りに生かしているケースもある。

 三年前から参加する新聞社の女性記者(39)は「正しく正確に伝えられているかを振り返る機会」と話す。

 課題もある。海外では評価結果をインターネットで公開しているが、研究会では未実施。記事の二次利用が有料だったり、許可されていなかったりすることが主な理由で、今後、何らかの方法での公開を検討しているという。

 これまでの成果を全国にも広げるため、地方での“出張版”を積極的に開催する方針。子どもたちの情報を見極める力を伸ばそうと会員が中学校などに出向き、生徒とともに記事を評価する取り組みも一昨年から始めた。渡辺さんは「立場や世代を超えた交流と相互理解を進めたい」と話す。

 * 

 同研究会は出張版の共催や企画協力を募集している。対象は医療機関や学校、自治体など。費用などは応募者側が負担し、会員は演者を務めたり、告知をサポートしたりする。十月から半年間に開催する企画を三月末まで受け付けており、研究会のホームページに募集要項を掲載している。

評価に使う10の指標

(1)現在利用可能か、どのような人の利用に適しているかを正確に伝えているか

(2)どのような点が新しいかを正確に伝えているか

(3)既存の代替できる選択肢と比較しているか

(4)過度の不安をあおることなく適切に伝えているか

(5)科学的根拠の質を踏まえて書かれているか。事実と推論が書き分けられているか

(6)治療や薬の効果を数値を用いて説明しているか

(7)副作用や合併症などについて、意思決定に役立つ情報を提供しているか

(8)治療や薬の入手、利用に必要な費用について述べているか。比較できる情報を提供しているか

(9)複数の情報源に取材しているか。研究者と資金源との間に利害関係がある場合、それを踏まえて適切に報じているか

(10)見出しは記事の内容を適切に分かりやすく要約しているか

 

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