トップ > 特集・連載 > 医療 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

医療

終末期医療やケアの選択 カードゲームで話し合い

家族や医療者 意思疎通の助けに

 もし、余命半年と伝えられたら、どういう医療を受け、どう生きたいか−。高齢者や家族、医療、介護の関係者らが「もしものための話し合い」をしながら進めるカードゲームが、各地の高齢者施設などで取り入れられている。「もしバナゲーム」といわれるこのゲームでは、短時間で参加者の価値観に触れる深い話ができる。十一月に名古屋市内であった体験会を取材した。(出口有紀)

 カードは全部で三十六枚。そのうちの三十五枚には「家族と一緒に過ごす」「機器(人工呼吸器や点滴など)につながれていない」「あらかじめ葬儀の準備をしておく」などと記されており、残る一枚は独自の希望がある時に使う。

選んだ「もしバナゲーム」のカードを並べ、理由などを話し合う参加者=名古屋市南区で

写真

 四、五人程度まで何人でもできるが、名古屋市内で開かれた体験会には、医師やケアマネジャーら約五十人が参加し、四人一組でプレーした。参加者にはあらかじめ五枚ずつカードを配布。残ったカードから順番に、重要だと思ったものと交換することを繰り返す。最終的に手元に置いた五枚から、最も大切だと思う三枚を選び、その理由などを語り合う。

 愛知県蒲郡市の女性(53)は、名古屋市熱田区に住む母(76)と一緒に参加。女性は母と自分のカードを見て「親子で違う…」と苦笑する。女性は「不安がない」「信頼できる主治医がいる」ことを重要視したが、女性の弟家族と同居している母は「家で最期を迎える」「大切な人とお別れをする」などを選んだ。「普段はみんな忙しくて、あまり真面目な話はしない。自分が死んでも、大事な人の心の中で生き続けられたら」と語った。

 体験会は、名古屋市内の介護事業所の職員らでつくる「認知症に優しいまちづくり実行委員会」が主催。ゲームの普及に取り組んでいる大阪府内の病院看護師礒野由紀子さん(49)らが講師として来場し「実際の終末期は意識がなく、自分の意思では治療方法などを選べないこともある。ゲームのように、限られた選択肢の中からベターな方法を考えて」と呼び掛ける。

 ゲームはもともと米国で作られ、日本では亀田総合病院(千葉県鴨川市)の地域医療などに関わる医師らが、ゲームの普及を図る一般社団法人「インスティテュート・オブ・アドバンス・ケア・プランニング」を二〇一五年に立ち上げ、一六年六月に翻訳版を販売。全国の介護施設などで使われてきた。

 厚生労働省が今春、終末期の患者の医療やケアの方針を決めるガイドラインに、患者が意思決定ができなくなる前に、家族や医療者らと何度も話し合う「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」の考え方を取り入れたことでも、ゲームへの注目が高まった。

 同院疼痛(とうつう)・緩和ケア科医長の蔵本浩一さん(42)は「ゲームを通じた話し合いから、今大事に思っていることを再確認し、積み重ねていくことが、もしもの時の思考訓練になる」と話す。

 同院在宅診療科部長大川薫さん(52)は「医療側は、患者が望む医療やケアを書面に残した『事前指示書』があると気持ちが楽になるところもあるが、無理やり指示書を作らせるのはよくない。まずは、自分の終末期医療やケアについて、患者が希望を主張してもいいんだということを、広く知ってほしい」と話す。ゲームは、同法人のホームページから購入できる。

 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索