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医療

障害者の口腔ケア 施設職員の研修進む

歯科衛生士が講習個性に応じて工夫

 愛知県歯科医師会(名古屋市中区)は、この秋から障害者施設の職員を対象に口腔(こうくう)ケアの研修を進めている。障害者の場合、歯磨きが苦手だったり、治療がうまく受けられなかったりして、歯周病などの疾患が重症化してしまうケースが少なくない。日ごろ接している職員らにケアの大切さを伝え、効果的な方法を実践してもらうことで、予防につなげるのが狙いという。 (小中寿美)

 研修は愛知県の委託を受けて計画した。九月から二回、名古屋市中区の県歯科医師会館で座学の講義を実施。歯科医師が、障害者の口の特徴やケアの基本を説明し、施設の職員百五十人余が参加した。ただ、職員らの悩みは、利用者の障害の程度や歯の状態によってさまざま。このため十月からは、歯科衛生士が施設を回って実習を行い、個別の相談にも応じている。

細久保真理子さん(左)から粘膜の汚れを取るスポンジブラシの正しい使い方を教わり、互いに試す職員ら=愛知県半田市のJJヒマワリで

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 同県半田市の障害者施設JJヒマワリには十一月下旬、歯科衛生士の細久保真理子さん(52)が訪れた。関連施設の看護師やグループホームの世話人など八人が実習に参加した。

 利用者は知的障害や身体障害があり、入所、通所のどちらの場合も食後に歯を磨く。職員は利用者が自分で磨くのを見守ったり、自分で磨けない人には磨いてあげたり。特に困るのは歯磨きを嫌がられ、口を閉じられたりすることだ。

 実習で細久保さんは、まず職員らに自分で歯磨きしてもらい、磨き方が適切か確かめた。「軽い力で小刻みに動かして」。続いて相手をいすに座らせ、後ろから磨く方法を教えた。寝かせ磨きほどの安定感はないがスペースを取らず、車いすからの移動も必要ない。姿勢をできるだけ安定させるため、体は密着させる。

 「嫌がる原因で考えられるのは介助者の磨き方が強すぎること。痛みが出ている可能性もある」と指摘。歯ブラシが当たるところを見ながら優しく磨くのがポイントという。

 口を開かない時は「過敏な前歯は避けて下の歯の外側から磨き始めるといい。口の周りや頬をマッサージして力を緩める方法も試して」。グループホームで働く森下清子さん(55)は「ちゃんと磨かなければと必死過ぎた」と振り返り、「やれるところから少しずつやっていきたい」と話した。

 歯科衛生士による施設への出張講習は約二十カ所で行う予定で、本年度の募集は終わっている。

治療嫌がり暴れるケースも

悪化前に「認定協力医」へ

 障害者歯科に詳しい県歯科医師会の小島広臣さん(48)によると、たとえば自閉症の人は、見えない状態で口を触られることや光・音の刺激が苦手。ダウン症は歯並びが悪いこともあり、若い時から歯周病が進みやすいなど、口の中に特徴のある障害もある。

 県内の障害者施設では定期検診が行われているが、年一回と機会は少ない。治療が必要になっても、診察を嫌がって暴れるケースもあり、家族や職員が歯科医師に迷惑をかけることなどを案じて連れて行けず、症状が悪化するケースは今も見受けられる。重症化すれば治療はますます大変になるため、小島さんは「治療が難しい人こそ、予防や早期の治療が重要。幼児期から検診に通って歯科の雰囲気に慣れることも大切」と訴える。

 特徴や個性に応じた治療を専門に行えるのが障害者歯科だ。愛知県の場合、治療施設が地域ごとに計十四カ所、高度な治療を担う施設が別に二カ所ある。しかし紹介状が必要で、気軽に通えず、近所のクリニックに行っても受診を断られることがあったという。

 県歯科医師会は二〇〇六年度から、検診や簡単な治療に応じ、それが難しい時は専門の施設につなぐ「認定協力医」を養成。三百人近くまで増え、ホームページに名簿を載せている。同様の仕組みづくりは岐阜、三重など他県でも行われている。

 

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