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医療

安心のみとり 地域が支える 在宅医療と介護 連携

医師、看護師、ケアマネ 綿密に情報交換

 団塊の世代が七十五歳以上になる二〇二五年を見据え、住み慣れた場所で最期が迎えられる地域をつくろうと、在宅医療と介護が連携して高齢者を支える取り組みが各地で進んでいる。安心できる自宅療養の実現のためには、高齢者から日々出される要望や連絡に主治医や看護師、介護職らが切れ目なく対応することが必要だ。愛知県内では、医師会を中心に医師や看護師などの専門職が連携を強め、各地で在宅医療やみとりを支える仕組みを整えている。(出口有紀)

 「今までご縁がなかったにもかかわらず、医師や看護師が一生懸命みてくれた。おかげで自宅で母をみとることができた」。名古屋市中村区の女性(55)は十一月中旬、自宅で末期がんの母親(94)を見送った。

医師の古山明夫さん(右)は定期的に女性の自宅を訪れ、母親を診察した=名古屋市中村区で

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 おだやかに周囲への感謝を語る女性。ただ、自宅での介護に自信があったわけではない。今夏、母親は左大腿(だいたい)骨を折って入院。十月上旬になって、かつて手術した大腸がんから肺などに転移していることが判明した。退院予定が決まったばかりだった。「このまま家に戻って大丈夫?」と話す母親に女性の不安も募ったが、病院とケアマネジャー(ケアマネ)八神朱里(あかり)さん(32)に相談し、自宅に帰ることにした。

 八神さんは、終末期患者への対応の経験が豊富な中村区の医師古山明夫さん(67)を軸に、母親が自宅で療養できるためのプランを作成した。週末以外は毎日、看護師が自宅を訪れリハビリなどを取り入れたほか、古山さんも定期的に訪問。母親の体調に変化があれば、看護師が駆けつけ、痛みが出た場合は古山さんも自宅で対処できる体制を整えた。

 それでも、母親の変わりやすい症状に「やはり病院がいいのでは」と女性の気持ちは揺れ動いた。女性の心理を知ろうと、市医師会による支援システムを活用。訪れた看護師らが日々、患者の病状や食事の状況、家族の様子などをタブレット端末などに入力して情報を共有、意見交換にも活用した。

 女性が「皆さん、母の状況や私の気持ちも分かってくれた。家でみとれる覚悟ができた」と思ったころ、母親が急変。母親は女性や駆けつけた看護師らに見守られ、息を引き取った。約一カ月間の在宅医療。八神さんは「以前は電話やファクスでのやりとりでささいな変化や細かいことは分からなかったが、今回は詳細な情報が即座に入り、娘さんの迷いに寄り添えたと思う。システムの役割が大きかった」と振り返る。

名古屋市医師会 体制作り

 名古屋市医師会による在宅医療の支援システムは二〇一五年から稼働。現在、同意を得た患者七万六千三百十一人の情報を登録している。市内全十六区に在宅支援センターを設置し、在宅で急変した患者を受け入れる病院を輪番制で決めたり、主治医が不在でも別の医師に診療を依頼できたりする体制を整えている。

 センターでは、住民からの相談に応じるほか、医師や看護師、ケアマネら各専門職が互いに顔が見える関係づくりを心掛ける。中村区のセンターでは十一月下旬、ケアマネと、区内の病院の医療ソーシャルワーカーが集うサロンを開催。患者が入院する際、入院前の状況を把握できなかったり、逆に退院した患者の入院時の病状が分からなかったりした経験を語り合い、改善策を探った。

 中村区のセンター職員浦田幸好子(さよこ)さん(58)は「介護側は本人の生活の維持、医療側は治療や処置に重きを置くが、互いの役割が分かれば、よりよい支援につながる。センターが連携に足りない部分を補い、いつかセンターが必要なくなるまでになれば」と話す。

8日にシンポ

 愛知県医師会と愛知県は八日午後二時半から、名古屋市中区丸の内二の東建ホール・丸の内でシンポジウム「医師会がつなぐ医療と介護の連携」を開く。日本医師会の江沢和彦常任理事による基調講演のほか、名古屋市医師会による活動報告などもある。無料。問い合わせは県医師会医療業務部第3課=電052(241)4143=へ。

 

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