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腸内細菌整え体調改善を 検査で状態解析 食事指導や臨床研究

医療機関が取り組み

 食生活を通じて腸内細菌のバランスを整え、便秘や下痢などを改善しようとする取り組みが医療機関で始まっている。腸内細菌の状態を調べた上で、医師や管理栄養士らが栄養指導などをしており、専門外来を設ける病院も。まだ不明な点も多いが、さまざまな疾患との関連が指摘されており、臨床現場での研究も進められている。(山本真嗣)

 「腸内細菌を整えると、セロトニンというホルモンが出てリラックスできる。無理のない範囲で指導内容を続けてください」

 愛知県一宮市の山下病院で腸内細菌外来を担当する消化器内科医長の泉千明医師(38)は、経過観察で来院した女性(55)に話し掛けた。

患者(左)の便の状態を聞き、腸内細菌の状況を説明する泉医師=愛知県一宮市の山下病院で

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 女性は以前から排便が不規則でおなかが張り、体重も高止まりで悩んでいた。六月に同外来で腸内細菌を調べると、通常人間の腸に多く生息し、免疫にかかわるとされる細菌のグループがほとんどいないことが判明。太りやすい体質と関係の深い細菌の比率が高いことも分かった。

 食生活では、免疫関連の細菌のエサになる野菜が少なく、ヨーグルトやキムチなどの発酵食品と野菜をとるよう指導したところ症状は改善。女性は切り干し大根やゆでた野菜を作り置きして毎日食べているといい、「すごく楽になった」と喜ぶ。

 消化器内科医の服部昌志理事長(50)によると、腸には免疫細胞の七割が集中し、腸内細菌が人間の健康維持に大きくかかわっている。「善玉菌」が二割、「悪玉菌」が一割、状況次第で変わる「日和見菌」が七割ほどとされ、このバランスが崩れると、体調不良や疾患につながるという。

 腸内細菌外来は今年一月に開設。おなかの調子が悪いが、従来の治療や検査では効果が十分なかったり、原因が不明だったりする人を主な対象に、便に含まれる腸内細菌の構成を調べ、医師と管理栄養士が食生活や運動の習慣付けなどを指導する。

 検査は腸内細菌の解析を専門とするベンチャー会社「サイキンソー」(東京)が実施。結果は大きく五つに分けた細菌のグループの比率とビフィズス菌、乳酸菌など主な細菌の割合、多様性や太りやすさなどを示す。栄養指導では、ビフィズス菌や納豆菌といった微生物を含む発酵食品と、オリゴ糖や食物繊維など微生物のエサとなる物質を含む食品をバランス良くとるよう促す。

 全て自由診療で、同院では検査と医師の説明、栄養指導を合わせて現在は一万七千円。毎週月曜日で、十一月初めまでに静岡など県外からも含め百十八人が利用し、経過観察で訪れた四十八人のうち七割で症状の改善がみられたという。

 泉医師は「全く効果がない人もおり、まだ分からないことも多い。ただ、腸内細菌という観点で自分の体や生活習慣を見直し、改善へつなげるきっかけになる」と話す。

 サイキンソーによると、十一月現在、消化器系を中心に全国の約二百三十の医療機関が同社の検査を使用している。

 浜松市で、大腸や肛門を専門とする松田病院は二〇一六年から毎週木曜日に「腸内フローラ相談室」を開設。腸内細菌の検査や食事などの指導のほか、検査を活用して病気と腸内細菌との関連を調べる臨床研究にも取り組んでいる。

 五月には、原因不明の下痢や便秘を繰り返す「過敏性腸症候群」の患者と健康な人計約百人を対象に腸内細菌の検査を実施。現在、結果を集計し分析している。

 担当する川上和彦副院長(62)は「腸内細菌の状況がわかれば、病気の早期発見や治療、予防につながる可能性がある。今後、潰瘍性大腸炎やクローン病、がんなどとの関連も調べていきたい」と話す。

    ◇

 腸内細菌 腸内に生息する細菌で、数百種類500兆個以上に上るとされる。腸内にびっしりと生息している様相から花畑に例え「腸内フローラ」と呼ばれている。がんや肥満、糖尿病、アレルギー、骨粗しょう症、うつなどさまざまな疾患と関わりがある可能性が指摘されており、研究が進められている。

 

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