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「患者の本音伝える場、社内に」 闘病しながら働くつらさを、感謝を

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 ステージ4のがん患者で、愛知県豊田市のボルト製造会社「メイドー」で働く山本翔太さん(31)は、同社と関連会社のグループ総会で、闘病しながら働くつらさ、職場への感謝の思いを報告した=写真。思うように働けない自分を嫌悪した時期もあったが、仲間に気持ちを伝え働き続けている山本さんは「さまざまな患者が思いを吐き出せる場を社内に作りたい」と夢を語った。 (編集委員・安藤明夫)

 勤続九年の山本さんは、三年前、鼻の奥にあたる上咽頭に、希少がんの腺様嚢胞(のうほう)がん(ACC)が見つかった。

 既にステージ4。二カ月間の重粒子線治療を受けて職場復帰したが、一年後に胸椎と腰椎へ転移。骨の破壊を抑える治療を続けてきた。腰や背中に負荷をかけると骨折の恐れがあり、工場勤務からパソコン中心の事務部門に移った。

勤め先のグループ総会で闘病体験を語る山本翔太さん=名古屋市中区で

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 治療しながら働く中で、山本さんは孤立感に苦しんだ。「通院や体調不良で休むたびに、罪悪感にかられ、自分がいなくなった方がいいのではと悩んだ」と振り返る。周囲から「頑張って」と励まされても「どれだけ頑張っているか知らないくせに」と感情的になったこともあった。妻と三人の子を抱え、配置転換で時間外手当が減ったことも苦痛だった。

 しかし、ACCの患者会などに参加し、前向きに闘病する仲間の姿に感銘を受け「自分が心を開かなければ、だれにも理解してもらえない」と考えるように。上司や同僚に自分の思いを話してみると「周囲も、どう接すればいいか困っていたと分かった。自分自身が理解や配慮を求める努力、勇気が足りなかったことに気付いた」という。

 一人でできること、手伝ってほしいことなどを正直に話し、「ありがとう」と言い合える中で、元気になれた。そして、言いたくても言えない状況をなくすために「気軽に本音で語り合える患者サロンのような場を作りたい」と考えるようになった。上司や、職場適応援助者(ジョブコーチ)に相談したところ、職場で勉強会を開いて検討することになった。また、山本さんの思いを社内や関連会社の人たちにも知ってもらおうと、二日に開かれた総会の中に、約十五分の発表の場を設けてくれた。

 山本さんは「理解し、配慮してくれた会社や仲間への感謝を忘れず、恩返ししていきたい」と報告を結んだ。

「分かってもらえない」人間関係を苦に退職も

 仕事と治療の両立支援に取り組む市民団体「ブリッジ」(名古屋市)の代表服部文さんは「山本さんが自分の状態を受け入れ、話せるようになったこと、その思いを会社が酌み取って、発表の機会を提供してくれたのはすばらしい」と評価する。

 医療の進歩で、進行がんであっても長く働ける人が増える中、「周囲に分かってもらえない」「休んで迷惑をかけたので、つらいと言えない」「上司に病状を告げたら、周囲に伝わってショックを受けた」など、患者が職場の人間関係に苦しみ、退職してしまうケースも多くなったという。

 治療と就労の両立については、各都道府県の産業保健総合支援センターに相談窓口があり「一緒に復職プランを立てることもできる。積極的に活用を」と呼びかける。

          ◇

 進行がんの人も長く働き、生活する時代になりました。「がんになっても」は随時掲載で、がんと共に生きる人たちの姿や、社会の変化をリポートします。

 

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