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医療

化膿性汗腺炎 慢性的痛み  脇など腫れ 希少性皮膚疾患

心理的負担 生活に支障も 

認知度低く 診断に時間

 脇の下などに膿(うみ)がたまって炎症を起こし、慢性的な痛みや悪臭を伴う「化膿(かのう)性汗腺炎」。希少性の皮膚疾患で、医師の間でも認知度が低いため、診断までに数年かかるケースが多い。他の皮膚疾患と混同されて適切な治療が受けられず、皮膚がんになる恐れもある。この疾患に詳しい専門医は「患者の負担を減らすには早期治療が必要。そのためにも病気を周知する必要がある」と訴える。 (河野紀子)

 神奈川県の大学四年の男性(21)は六年前に発症。当時は脇の下のおできが気になる程度だったが、大学一年の夏に症状が急激に悪化した。「膿がたまってぱんぱんに腫れた。歩くのも振動が伝わって痛かった」

 かかりつけの皮膚科医に整形外科を紹介され、メスで切開して膿を出す治療を受けた。かかりつけ医がこの疾患について知らなかったためだ。すぐに膿がたまり、ひどいときは二週間に一回のペースで切開。術後は二日ほど痛く、発熱することも。「膿は自分でも汚いと感じて、友人にも相談できなかった。膿で服が汚れることもあり、ストレスがたまってつらかった」

化膿性汗腺炎により膿がたまって、炎症を起こして赤く腫れた重症患者の脇の下(カナダの疾患情報サイト「HSOnline」のホームページから)

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 その後、化膿性汗腺炎に詳しい皮膚科医を受診し、発症から四年でようやく診断された。投薬治療で症状は少しずつ改善し、二年前に炎症のある皮膚を取り除く手術を決意。一週間入院し、術後の痛みも耐えた。いまは一カ月に一回の経過観察を続けている。

 化膿性汗腺炎は、汗を分泌する汗腺がふさがることで発症。原因は不明で、脇の下のほか、お尻や足の付け根、陰部などに症状が出る。国内の患者数は十万人に四人とされるほど希少な疾患だが、思春期の十代に発症することが多く、症状が改善しても再発を繰り返す。患者の七割は男性だ。

 虎の門病院(東京)皮膚科の林伸和部長は「最初はおできがポツポツできる。この段階でにきびと見分けるのは難しい」と話す。次第におできに膿がたまって赤く腫れ、触ると痛むように。悪化すると、腫れた部分が破裂して膿が流れ出たり、複数のおできがつながってみみず腫れのようになったりし、痛みや悪臭につながる。炎症が長引き、皮膚がんを発症したケースもある。

 確立した治療法はなく、改善するには、皮膚の炎症を抑える抗菌薬を服用する。それでも炎症が続くときは、患部をメスで切開して膿を出す。重症になると、手術で患部の皮膚すべてを切除し、縫い合わせるか植皮する。手術は効果が高いが、再発の可能性は残るという。

 心理的な負担も大きい。炎症のある脇の下などを服で隠したり、膿で服を汚さないために患部にパッドを当てたり、お尻全体に広がっておむつをはく人もいる。林部長は「恥ずかしくて家族や友人に話せずに一人で悩んでしまう。仕事を辞めたり、うつ病になる人もいる」と話す。

 根治は難しいが、患者の負担を少なくするためには、重症化する前に早い段階で治療することが必要だ。だが、症状が複雑で診断が難しい上に、この疾患について十分な知識がない医師も多い。

 林部長らの調査によると、この病気の診断や治療法を理解しているのは、皮膚科医でも六割ほど。「早期の治療につなげるためにも、病気を周知していくことが大切だ」と林部長。診療の傍ら、講演会などで情報発信に努めている。

 

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