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看護師ら過労の悩み共有 組織の枠超え「ナースカフェ」 人手足りず「心も疲弊」

 患者の命を守る「白衣の天使」が過労で悲鳴を上げている。人手不足や患者の高齢化を背景に、不規則な長時間労働で慢性的に体が疲れている上、常に患者の容体に神経をとがらせ、心身共にストレスをためている。名古屋市内では、看護師や助産師らが悩み事を話し合う「ナースカフェ」が開かれ、つらい気持ちを共有し合った。 (花井康子)

患者の高齢化 負担増に拍車

 十月下旬、名古屋市東区の飲食店に十四人の看護師や助産師らが集まった。お茶をしながら悩み事を話し合う「ナースカフェ」。テーブルを囲むと早速、悩みを打ち明け始めた。

 総合病院の外科病棟に勤務する名古屋市中村区の看護師(42)は「残業が多すぎる」と漏らした。病室は常に八割ほど埋まっている。日勤の場合は、朝から午後五時ごろまでは患者の対応に追われ、その後、時間内に書き切れなかった看護記録を付けるなど事務作業が待っている。業務で使う電子カルテは記録項目が多く、入力に時間がかかる。

「ナースカフェ」で、職場環境や人間関係などの悩みを話し合う看護師ら=名古屋市東区で

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 病棟の看護師は二十数人で夜勤は三人体制。「せめて夜勤が四人体制にならないと追いつかない」とため息をついた。

 患者の高齢化が進み、ケアや事務量の増加で年々、仕事量が増えている。「中にはナースコールができない患者もいる。ベッドから落ちたり、点滴が抜けても気付かなかったりする患者もいるため、絶えず目が離せない」と訴えると、参加者の多くが「分かる、分かる」とうなずいた。

 訪問看護で終末期の患者と関わる中村区の看護師(27)は「医師と家族の治療方針が合わず、板挟みになることも多い。看護師だって人間。寄り添いたい気持ちが失われるほど疲弊している」とこぼした。

 愛知県大府市の助産師(37)は十四年ほど前、パニック障害とうつ病を発症した。勤めていたクリニックで常勤の助産師は自分を含め二人だけ。お産の最中に、別の妊産婦からナースコールが次々に鳴る。「陣痛が苦しい」「母乳のあげ方が分からない」…。優先順位の高いものから緊急を要しないものまでさまざまな声が降り注ぐ。

 「お産に関わりたい」と選んだ仕事だったが「(母体と胎児の)二人の命を預かっているという責任感が常にあり、押しつぶされそうだったが、元気な自分を演じ続けた」。

 一晩の夜勤中に四人の分娩(ぶんべん)と帝王切開が重なり、眠れなかったことも。「病院の規模にもよるが個人病院で一カ月の分娩が四十件を超えると二人では厳しい」

 「ナースカフェ」は八月に始まり、これまでに二回開催。主催した元看護師で、日本疲労メンテナンス協会代表理事の時任春江さん(53)は「看護師同士がつながり、悩みを共有することで心が軽くなる。看護師自身が疲労に気付き、自分でケアできるようになってもらえたら」と話している。

      ◇

 次回のナースカフェは二月九日に名古屋市東区で開催予定。(問)時任さん=電050(3591)1674

 日本看護協会(東京)の調査では、回答した交代制勤務の看護職員千七百二十八人のうち、4・3%が月六十時間超の時間外勤務をこなしていることが分かった。看護職員の離職率は年間平均約11%で、原因は夜間の長時間勤務や教育体制の不備が大半を占める。

 厚生労働省保険局医療課によると、看護師一人に対し一般の入院患者十五人が最低限の配置基準。一人で見る患者の基準数は欧米の倍以上だ。医師と患者のやりとりの記録や日報の作成など目に見えない仕事も多く、看護師の現場は慢性的な人手不足に陥っている。

 患者の高齢化も負担増に拍車をかける。時任さんは「目が離せない高齢の入院患者が増え、病院では医療よりも介護の比重が大きくなっている。一人のケアに時間を取られ、仮に看護職員の数を増やしても仕事が楽になったという現場の実感は乏しく、超過勤務はなくならない」と話している。

 

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