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医療

患者が望む「終末期」に 本人・家族と医療チームが話し合うACP

判断能力不十分な人支援も

 「アドバンス・ケア・プランニング」(ACP)という言葉を医療福祉の分野で耳にするようになった。患者・家族の思いを終末期などの医療・ケアに反映できるように、話し合って進めていくという意味で、厚生労働省も四年前から普及啓発に力を入れている。病気や障害などで判断能力が不十分な人の意思決定を手助けする取り組みも少しずつ広がってきた。患者・家族の側も元気なうちに「死」について話し合う雰囲気づくりも大切だ。(編集委員・安藤明夫)

 江南厚生病院(愛知県江南市)で地域医療福祉連携室長を務める医療ソーシャルワーカーの野田智子さんは昨年、忘れがたい経験をした。

 四十代の男性ががんで手術を要する状態となったが、知的障害のため意思の確認が難しかった。家族が「本人は医療スタッフからの指示が理解できないと思う」と話したため、医師は手術の見送りをいったん決めた。その後、家族から「本人抜きで決めていいんだろうか」との相談を受け、野田さんは入院中の男性と面談を重ねた。最初は緊張していた男性も「痛いのは嫌」などと断片的に答えるように。そして、長く勤めてきた工場に愛着を持ち、復職の意欲があることが分かった。

 野田さんの提案で、担当医が再度、男性と家族に説明。がん看護専門看護師が治療の手順を図解した資料を作成し理解を助けた。男性は手術を選び、成功。復職を果たした。その後がんの転移により亡くなったが、家族から「あの時、本人が判断してくれて、本当に良かった」と感謝され、野田さんはACPの大切さについて、思いを新たにした。

 ACPとは、今後の治療や療養について、患者・家族と医療・ケアチームが話し合って決めていくこと。患者本人の価値観や意向、気掛かりな点も酌み取り、病気や予後についての理解を補いながら進めていく。「人工呼吸器の使用を停止するかどうか」といった重い選択につながるケースもある。本人の意思がはっきりしている間に家族で意向を共有できるように、死をタブー視せずに話し合う雰囲気を作ることも重要だ。

 患者の判断能力が不十分な場合も。野田さんは「スタッフの評価がばらばらだとうまくいかず、結果的に医療者の流儀が優先されてしまったりする。研修などでばらつきをなくしていく必要がある。退院した患者さんと接する地域の医療福祉関係者も同様」と話す。

 愛知県は「あいちACPプロジェクト」として、本年度から各医療圏で、ACPを推進するエリアリーダーを育成している。先月二十八日に江南厚生病院で行われた研修会には、愛知県尾張北部地域の医師、看護師、訪問看護ステーション職員らが参加。国立長寿医療研究センター(同県大府市)の三浦久幸さん(在宅連携医療部長)らが作成したテキストやビデオをもとに班に分かれて討論した。三浦さんは「この一年で五百人を育てる予定だったが、反響が高く七百人ぐらいになりそう」と手応えを語る。

ボランティア、住民向けセミナーで、「もしバナカード」を使って「いざというとき」について考える参加者たち=7月、愛知県東海市で

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 同センターの西川満則さん(緩和ケア診療部医師)らは、知多半島地域で福祉関係者や住民向けのセミナーを続けており、亀田総合病院(千葉県)が開発した「もしバナゲーム」を活用。「もしものための話し合い」の略で、三十五枚の札に「人生の最期を一人で過ごさない」「信頼できる主治医がいる」などのキーワードが書かれている。カードの言葉を使いながら参加者同士が話し合うゲームで「自分の価値観を理解できた」「まだ先のことだと思っていたが家族でやってみたい」といった反響が多いという。

25日にシンポ

 日本尊厳死協会東海北陸支部は二十五日午後一時半から、名古屋市中区栄四、愛知県医師会館講堂で講演会「ACP推進のために」を開催する。西川さんと、在宅医療に携わる森亮太・杉浦医院院長(名古屋市)が、思いを語る。中日新聞社後援。入場無料。(問)同協会=電052(481)6501

 

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