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医療

オプジーボ 過度の期待 現場に混乱

ノーベル賞で再注目

効果は限定的 要件無視の自由診療も

 本庶佑(ほんじょたすく)・京都大特別教授のノーベル医学生理学賞受賞が決まったことで、本庶さんが開発したがん治療薬「オプジーボ」への過大なイメージが広がり、医療現場で混乱を起こしている。「夢の薬」「万能薬」などと喧伝(けんでん)されることもあるが、効果が期待できる患者は現状ではまだ一握り。科学的な根拠の乏しい免疫細胞療法のクリニックも、ムードに便乗する形でPRしており、患者自身が正しい情報を得て判断することが大切だ。(安藤明夫、小中寿美)

 本庶さんのノーベル賞受賞が決まった翌日、悪性リンパ腫患者会「グループ・ネクサス・ジャパン」(事務局・横浜市)には「今の抗がん剤をやめて、オプジーボを使えないか」などの問い合わせが相次いだ。

 悪性リンパ腫のうち、保険診療でオプジーボを使えるのはごく一部だが、「これを使えば治るのでは」と過度の期待を寄せる人が多かった。

 患者会理事長で、全国がん患者団体連合会(全がん連)の理事長も務める天野慎介さん(45)=横浜市在住=が調べてみると、他の患者団体の相談窓口や、各地のがん診療連携拠点病院の外来でも同様の問い合わせが相次ぎ、混乱が起きていた。

 全がん連は、受賞決定四日後の五日に注意喚起の声明を発表。「効果が期待できるがんの種類は限られており、特有の副作用もある」として、情報の判断に迷う患者や家族に▽主治医に相談を▽効果だけでなくデメリットについても情報を集め判断を▽自由診療の免疫細胞療法の情報には気を付けて−などと呼びかけた。

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 オプジーボなど免疫機能に働き掛ける「免疫チェックポイント阻害剤」は国内で現在六種類が承認されている。使用できるのは、いずれも手術不能ながんで、従来の抗がん剤が効かなくなった場合などに限定されている=表参照。厳しい条件が付いているのは、従来の抗がん剤などと比較して治療の有効性が証明された部分が限られているためだ。服用による副作用で、間質性肺炎、1型糖尿病、リウマチなどの重い病気を引き起こし、使用中止になる場合も。死亡例も報告されている。今後、多くの臨床試験を積み重ねて適用範囲の拡大や治療成績の向上が期待されるが、現状では治療効果があった投与患者は20〜30%程度とみられている。

 オプジーボを使える施設や医師は、厚生労働省が要件を定めているが、それを無視して、独自の処方をしている自由診療の免疫細胞療法クリニックも。この声明づくりに協力した勝俣範之・日本医科大武蔵小杉病院腫瘍内科教授(54)によれば、個人輸入したオプジーボを大幅に薄めて他の薬と組み合わせるケースもあり、「ノーベル賞に乗じて『免疫療法はやっぱりすごい』と宣伝しているのは非常に問題」と憤る。

 こうしたクリニックはネット上で見つかるものだけで三百施設以上ある。治療効果が科学的に証明されているのは、チェックポイント阻害剤だけなのに、それ以外の療法を患者の体験談付きで載せるなどしてPRしている。「オプジーボは非常に画期的な薬だが、すべてのがんに効くわけではない。自由診療で、患者さんの体験談が載っていたらあやしいと思う方がいい」と警告する。

 愛知県がんセンター中央病院(名古屋市千種区)の緩和ケア部長・下山理史(さとふみ)さん(47)も、オプジーボへの患者・家族の期待と失望、不安を数多く受け止めてきた。

 「使えない(適応外)と言われた時は本当にがっかりしました。テレビや新聞で実際に治療を受けた患者さんが出ていて、効果があるって言われていたのに」と嘆く患者の思いに耳を傾け、現在受けている治療が最良だと丁寧に説明することもある。「報道がどうしても、オプジーボのすばらしさだけに力点を置いているので、患者さんも惑わされやすい。さまざまな情報に振り回されないように支えていく必要がある」と話す。

 

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