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寄り添ってはいるけれど(下)支援者のケア 見えないストレスを軽減

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 「眠れなかったですか? それは大変でしたね。でも災害現場でストレスを受けない人はいません。正常な反応ですよ」。疲弊しきった支援者に寄り添いながら、日赤医療センター(東京)の臨床心理士秋山恵子さん(34)が優しく語りかけた。その後も背中をさすりながら、ゆっくり話に耳を傾ける。

 日赤は七月中旬から八月末まで、秋山さんら臨床心理士や看護師などのべ三百十五人を、西日本豪雨で大きな被害を受けた広島県呉市に派遣。被災者のほか、行政職員や保健師、教職員など被災者を支える仕事に就く人たちのストレスを軽減しようと、「こころのケア活動」を行い、延べ六百三十七人の話を聞いた。このうち三割が支援者だ。

 「水が出ない」「対応が遅い」−。いら立つ住民からのクレームを一身に引き受け、被災者を支援する立場の人たちは現場を駆けずり回っていた。自宅が倒壊するなど自ら被害を受けた人も。秋山さんによると、行政の職員らは地域に思い入れが強く、故郷が傷ついた喪失感も強くなりがちだという。災害時は通常とはまったく違う業務を担うことになるが、同僚らとミーティングを開く余裕もなく、互いに思いを打ち明ける機会もない。

 秋山さんは「支援者は住民を助けてあげたいという気持ちの強い人で、復興に携わる仕事にプライドを持っている。家族を亡くしたり家が浸水したりしている人も多いが、『自分は大丈夫』と後回しにして本音を出さないため、つらさが見えづらく、ケアも遅れがちになる」と警鐘を鳴らす。

「こころのケア活動」では被災者や支援者の悩みを聞いている=広島県呉市で(日赤提供)

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 日赤が「こころのケア活動」を始めたのは二〇〇四年の新潟県中越地震のとき。一一年の東日本大震災時からは、本格的に支援者のケアにも取り組んできた。役場の一角などに専用の個室「リフレッシュルーム」を設け、音楽を流したり室内でコーヒーを飲めるようにしたりして、リラックスした雰囲気の中で悩みに耳を傾ける。

 六日に起きた北海道胆振東部地震の被災地でも、臨床心理士や看護師らが厚真町など被害の大きかった地域を回り、ケア活動を続けている。十七日から四日間、現地でケア活動をした日赤岩手県支部の看護師小田切宏恵さん(59)によると、停電の影響で夜に不安感が強まって眠れない人が多く、頭痛や不眠、体のだるさなどに悩まされる住民が出始め、ケアに本腰を入れているという。

 日赤によると、支援者は、人助けをしているという高揚感や英雄感、達成感などがあり一見、前向きに見えるが、実際には大きなストレスを抱えているケースも。業務を「自分にしかできない」と思い込んで働き続けて燃え尽きたり、任務が終わって日常生活に戻った後に、自分の居場所を失ったような疎外感を感じたりもする。

 「支援者が燃え尽きてしまうと、住民への影響が大きい。地域では、支援者も支援を求めることがあって当たり前だと後押ししてほしい」と秋山さん。「支援者自身もできるだけ休み、信頼できる人に悩みを相談するなどセルフケアに努めてほしい」と呼び掛けた。(花井康子)

 

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