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医療

寄り添ってはいるけれど(中)どっちが大事 被災地支援の陰で

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作業に励む日々 家族と溝

 七月の西日本豪雨で大きな被害を受けた広島県呉市。広場に積み上げられたがれきを見ると、花瓶や傘、タオルなど多くの生活用品が含まれていた。ついこの間まで、ここで人々が営んでいた生活の証しだ。

 「生まれ育った街がぐちゃぐちゃになり、災害は無差別にやってくる。ある日突然、被災者になった地域の人たちを放ってはおけん」

 十歳、四歳、一歳の三児を育てる元看護師で主婦の吉住秀美さん(40)は、発生直後から浸水した家屋から土砂をかき出す作業をボランティアで続けている。市中心部の自宅マンションも断水したが「もっと困っている人がいる」と駆けつけた。

被災者宅で、土砂やがれきを取り除くボランティアたち。被災者との距離に悩むことも=広島県呉市で(吉住さん提供)

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 最初の一週間は、土石流が流れ込んだ知人らの家に通い、水などの物資を届けたり土砂を運び出したりした。当初は一人で通ったが、友人ら四、五人に呼び掛けてグループを作り、手分けして作業を続けてきた。

 シャベルで土砂を運んだり、ゴム手袋をはめて床下に潜って数時間かけてかき出し、土のう袋に入れて積み上げたり。土石流が流れ込んだ家では、軍手で少しずつ取り出した。泥にまみれたアルバムや衣類なども見つかった。「住んでいた方の思い出の詰まった場所。がれきに見えても家族の宝物が交ざっていることもあるけん」。来る日も来る日も作業した。

 三人の子供たちを知人や保育施設に預け、被害が大きかった地域に車で通い続ける日々。一カ月近くはほとんど休まなかった。疲労がたまり、長時間横になっていたり、食事の用意ができなかったりしたことも。家事がおろそかになり、家族との間に次第に溝ができはじめた。「そこまでする必要はあるのか」。日々家を空けることに、夫からはそう言われたこともある。土ぼこりで汚れ、ぶつけてボコボコにへこんだマイカーを前に、四歳の娘からは「もう行かないで」と泣き付かれた。

 被害が少なく、数日で普段の生活が戻った自宅付近に対し、被害が大きかった地区では今も家の片付けさえ終わらない状態が続く。同じ呉市内に存在する被災地と非被災地。わずか数キロしか離れていないのに、住民たちの温度差に戸惑いも感じていた。

 被災者との距離を感じることも。「あんたらボランティアには、私ら被災者の本当の気持ちは分からんけん」。ボランティア仲間が、ある被災者からそう言われたことを伝え聞いた。ふと漏らしたその言葉は、ある意味本音かもしれない。「誰かのためにやっているつもりでも、自己満足になっているのではないか」。悩みは日々、深くなっていった。

 被災から二カ月半。助けを必要としている人はまだまだ多く、作業の終わりは今も見えない。揺れる気持ちを抱えたまま、吉住さんは頻度を減らしつつ、ボランティアを続けている。使わなくなったおもちゃを子育て支援センターに寄付したり、新生活を始める人のためのフリーマーケットを計画したり。家庭とのバランスを取りながらできることを続けている。

 地域の顔見知りも増えた。あるとき、ボランティア仲間から言われた言葉を胸に刻んだ。「関わった人にしか分からないことはたくさんあり、助けられる人生もある。信念を持って、やり遂げればいい」(花井康子)

 

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