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 家族性神経難病 遺伝外の発病例も  多様な症状、難しい診断

TTR−FAP

製薬会社が情報提供

 タンパク質の遺伝子が変異してできた塊「アミロイド」が、臓器に沈着して起きる難病「トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(TTR−FAP)」。熊本、長野両県に患者が集中し、遺伝性疾患とみられていたが、最近はそれ以外の各地で発症例が報告され、親族に患者がいなくても発症するケースがあることも分かってきた。せきや下痢、便秘を繰り返し、一般の風邪と思い込む場合もあるが、専門家らは「早期に治療を始めないと命にかかわる可能性がある」と警鐘を鳴らす。 (花井康子)

 熊本市の元保健師藤本由香さん(54)が体に異変を感じたのは、二十年ほど前。下痢と便秘を繰り返し、嘔吐(おうと)して何度も倒れた。遺伝子検査を受けたところ「TTR−FAP」と診断された。その後、緑内障に。次第に視力が低下し、昨年、両目とも見えなくなった。保健師の仕事は続けられなくなり退職した。

 TTR−FAPは進行性の疾患で、沈着したアミロイドが臓器や末梢(まっしょう)神経、自律神経などに障害を引き起こす。下痢や便秘、吐き気のほか、胸がドキドキする動悸(どうき)やめまい、指先のしびれなどの症状が出る。放置すると、七、八年で歩けなくなって寝たきりになるという。下痢が激しくなってやせ細り、心不全や呼吸障害、感染症などで平均十年で死に至るとされている。

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 原因の多くは遺伝で、藤本さんの父親と弟も同じ病気にかかっていた。息子(24)には、幼いころから遺伝の可能性を話してきた。周囲からは「遺伝性の病気なのに子どもを産むなんて」と差別的な言葉を投げられ続けてきたが、「将来のある人たちの予防啓発のためにも、隠さずに生きたい」と藤本さんは話す。

 日本は、ポルトガル、スウェーデンと並ぶ世界的な患者の集積地で、国内の患者数は約七百人とされる。国内ではこれまで熊本県と長野県に患者が集中。両県に集まっていた理由ははっきりしないが、近年では両県以外の地域でも発症例が報告され、親族に発症例のない高齢の患者も増えている。神経内科の専門医で、この病気に詳しい熊本大大学院生命科学研究部教授の安東由喜雄さん(65)は、全国的に広がってきたのは「遺伝子変異が突発的に起こったのでは」と推測する。

 遺伝子が変異するタンパク質の九割以上が肝臓で作られているため、早期の肝移植が有効だが、高齢で手術が受けられなかったりドナーが見つからなかったりする場合もある。薬で進行の抑制や症状の緩和はできるが、現時点ではアミロイドの沈着を止め、病気の根本を治すことはできない。

 安東さんは「神経内科などを受診し、早期に治療を始めるのが有効だが、全身を診ないと分からない病気で、個々の臓器の治療で止まってしまい、適切な処置ができていないことが多い。見逃されている例もある」と指摘。その上で「特に、親族に患者がいない人はショックを受けることも多いので、周囲の精神的なフォローも必要」と話した。

 末梢神経障害の進行を抑制する薬を開発した製薬会社ファイザー(東京都渋谷区)は、パソコンやスマートフォンで病気の情報を見られる患者向けのインターネットサイトを二〇一三年に開設した。

 サイト上で体調や経過などを記録し、印刷して受診時に活用できる「相談シート」を掲載。治療についての説明や日常生活における注意点、治療が受けられる医療機関、遺伝カウンセラーからのメッセージなども紹介し、早期の相談を呼び掛けている。サイトは「TTRFAP」で検索。

 

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