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医療

乳がん手術後に発症 リンパ浮腫  

初期対応が予後を左右

名大病院 早期治療へ治験開始

参加者増へ啓発講座

 乳がんの手術を受けた患者の約二割がかかるとされるリンパ浮腫。一度発症すると生涯にわたって治療が続き、生活に支障が出ることもある。ただ近年の研究で、早期に発見して治療すれば、進行を防げる可能性があることが分かってきた。名古屋大病院手の外科は、早期の患者を治療する新たな医療機器を開発し、有効性を調べる治験に取り組んでおり、参加する患者を募っている。 (小中寿美)

 乳がんの手術では、転移を防ぐため脇の下のリンパ節を切除することがある。その影響でリンパ液の流れが滞り、腕や手がむくむのがリンパ浮腫。術後数カ月後の発症が多く、早期は自覚症状がほとんどない。

 これまでは軽度の場合、病名はつかず経過観察だった。症状が進むと診断されるが「その段階ではもう治らない」と、名大病院手の外科教授の平田仁さん(61)は指摘する。

 近年研究が進み、国際リンパ学会は五年前、新たな分類を発表=上図。これまで経過観察だったステージ「0」「1」を追加し、「2」以降は治らないとの見解を示した。

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 さらに、米保健福祉省が「0」「1」で治療を始めると「2」への進行を防げる可能性があると報告。国内でも検証しようと、名大病院は昨年、浜松医療センター(浜松市)と共同で治験をスタートさせた。

 早期治療には、早期発見が不可欠。八月、名大病院手の外科を訪れると、治験に同意した七十代の患者に手術前の検査が行われていた。体に弱い電流を流して浮腫があるかどうかを調べる。同じ検査を術後も一カ月ごとに行い、数値の変化で発症の兆しをつかもうというわけだ。

均等に圧をかけられる医療機器

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 治療はこれまで、看護師などが行う医療用マッサージや、弾性包帯などによる圧迫療法が推奨され、保険適用もされている。しかしマッサージを受けられる施設は少なく、圧迫療法は特定の部位に圧がかかり過ぎ、逆に悪化する恐れがあるため、均等に圧をかけられる医療機器を開発した。

 二重構造の袋に腕を入れ、電動ポンプで空気を送って膨らませ、腕に圧をかける。その状態で、袋の中のボールを握って放す「把握運動」をする。リンパ液の流れが良くなり、むくみが改善される効果が見込まれる。機器は貸し出され、患者が自宅で使うことができる。

 発症したと考えられる患者は本登録に進む=下図。機器を使った治療を受けるグループ(介入群)と、ダンベルを使った運動療法だけのグループ(非介入群)に分かれて半年続け、それぞれの効果を検証する。

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 課題は、治験に参加する患者が少ないこと。介入群と非介入群で計二十四例行うのが目標だが、本登録に進んだ患者はまだゼロ。手術の説明の際に治験の参加を提案しているが「なかなか同意を得られない」と平田さんは言う。

 治験は手術前の検査から始まるため、手術前に同意を得る必要がある。だが、愛知県内の乳がん経験者らでつくる「あけぼの愛知」代表の金岡益代さん(62)は「自分は助かるのかといった不安がつきまとう。リンパ浮腫まで考える余裕は正直ない」と話す。

 一方で、リンパ浮腫で通院を続ける愛知県稲沢市の女性(59)は「自宅で機器が使え、何より予防できるとしたら今後手術を受ける患者には朗報」と話した。

 「まずは知ってもらうことが大切」と平田さん。今後、術後のリンパ浮腫の市民向けの公開講座を開く。

 講座は三回でいずれも入場無料、事前申し込みが必要。日時と場所は次の通り。

 ▽17日後1、津市江戸橋の三重大医学部総合医学教育棟1階▽30日前10、名古屋市千種区不老町の名大坂田・平田ホール▽11月25日前10、同市昭和区鶴舞町の名大医学部基礎研究棟4階。(問)名大医学部手の外科講座内=電052(744)2957

 

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