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移植待ち期間 短縮目指すドナーの負担軽減も鍵 日本骨髄バンク新理事長 小寺良尚さんに聞く

 白血病など重い血液病患者を救うため、骨髄移植のドナー(提供者)の募集や移植までの連絡調整を担う日本骨髄バンク(東京)。新理事長に6月、愛知医科大名誉教授の小寺良尚さん(76)=写真=が就任した。バンク設立の契機となった東海骨髄バンクの活動に関わるなど、骨髄移植に長年携わってきた小寺さんに抱負や思いを聞いた。 (小中寿美)

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 −骨髄バンク事業の現状と課題は。

 ドナーは四十八万人に上り、移植を希望する患者にHLA(白血球の型)が適合するドナーが見つかる確率は95%まで上がった。ところが、実際に移植を受けられるのは57%。移植へと進まないのは、ドナー側の理由が大半で、健康の問題以外に「都合がつかない」「連絡がつかない」が多い。

 この状況を改善しなければ。骨髄提供には入院を含めて八日はかかり、特に働き盛りの人には大変。時間的な負担を少しでも減らす工夫が必要だ。提供に至らない可能性があるドナーを見極め無駄を省きたい。

 骨髄移植とは別に、白血球を増やす薬をドナーに注射し、末梢(まっしょう)血(全身に流れる血液)に流れ出した造血幹細胞を採取して移植する「末梢血幹細胞移植」も七年前に始まった。痛みなどの症状が出ることがあり、安全のため入院するケースが多いが、欧米のように通院で採取できる仕組みを関連の学会や国の研究班とともに目指していきたい。

 −血液内科医として骨髄移植に長年関わった。

 名古屋大で骨髄移植に関わる研究をした後、一九八五年に名古屋第一赤十字病院(名古屋市中村区)に赴任し、移植に携わるようになった。

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 血縁者間の移植は既に行われていた。HLAはきょうだい間だと四分の一の確率で一致するが、親子ではまれ。非血縁者間では数百から数万分の一の確率になる。広くドナーを募る骨髄バンクが英国で七四年、米国で八七年に設立され、日本でも運動が始まった。

 東海地方の医師のグループと元患者らが連携し、八九年に全国初の「東海骨髄バンク」を発足。一例目の移植で患者の治療を担当した。患者もドナーも元気に過ごされている。この成功が移植を推進する力になった。東海で五十五例行い、全国組織である今のバンクの設立につながった。

 −新理事長として抱負を。

 十分な体力があるなど患者が移植を受けるのに適した時期があるが、それに合わせて実施できているとはいえない。登録から移植までに百四十日ほどかかっている。時期を逃し、移植できても百日たたないうちに亡くなる人もいる。患者の命を救うため、期間の大幅な短縮を目指したい。

 ドナーの安全も重要だ。生命にかかわる事例が一つでもあったら、この仕組みは崩壊してしまう。移植を行う病院は約二百あり、医師や看護師は常に入れ替わるが、絶えざる注意喚起が必要だ。

 ドナーの確保は「一人でも多く」が合言葉。再生医療でもその必要性が高まっている。HLAには拒絶反応が起きにくい型があり、その型を持つドナーに協力してもらって人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作り、保存する事業が京都大で進んでいるためだ。七十種類ほどを保存すると日本人の大半の患者の治療が可能になるといわれている。骨髄移植の仕組みの維持には若い世代の理解が欠かせない。共感してもらえるような形で募集を進めていきたい。

 「世界骨髄バンクドナーデー」の9月15日、日本骨髄バンクは、大津市和邇(わに)高城の和邇文化センターで骨髄バンク推進全国大会を開く。午後0時半から同4時まで。入場無料。申し込み不要。

 血液内科医師の講演や、骨髄移植を受けた患者の体験談、命をテーマにした演劇と関係者の対談などがある。問い合わせは同バンク=電03(5280)1789=へ。

 

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