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医療

親子で青空を(下) 地域の理解に助けられ

成人後を見据え新施設も

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 名古屋市西区の長善寺のお堂に五月末、大勢の親子連れが集まった。寺が主催する地域の子ども向け行事。数十人の子どもたちに交じり、重い障害のあるゼロ〜四歳の五人が、間もなく始まろうとしている紙芝居と人形劇を心待ちにしていた。見慣れないお堂の飾りや仏像に目を奪われ、キョロキョロしている子も。

 障害児は、生まれつき脳や染色体に異常がある子どもたちで、近くの重症心身障害児向け施設「mini(みに)」に通う。たんの吸引や人工呼吸器の使用など日常的に医療的ケアが必要だが、年に数回、地域の人形劇やコンサートなどのイベントに足を運んでいる。日ごろは自宅や施設に閉じこもってばかりの子どもたちに外出の機会を設けるとともに、重い障害のある子どもたちの存在を、地域の人たちに知ってもらうことも狙いだ。

健常児と一緒にお堂に集まった医療的ケア児たち=名古屋市西区で(上野さん提供)

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 会場では、突然、たんを吸引する姿に驚き、思わず振り返る子もいたが、次第にその様子にも慣れ、子どもたちはすっかり会場に溶け込んでいった。

 「地域での理解が広まり、応援してもらって施設は成り立っている」。施設を開所した看護師の上野多加子さん(31)は話す。首が据わっていない子どもたちの散髪には、地元で働く美容師らが協力。地域の住民から、おもちゃやお菓子などの差し入れも届けられるという。

 地域での理解の広まりとともに、利用者も増えている。miniと、隣接する「miki(みき)」では日に最大七人ずつ計十四人を受け入れているが、常時数人がキャンセル待ちの状態だ。名古屋市外からも問い合わせがくるなど、希望者は増え続けている。「施設を必要としている子がいかに多いか、あらためて実感した」と上野さんは話す。

 全国でも、医療的ケアが必要な子どもは増えている。厚生労働省によると、医療的ケア児の数は全国で一万八千人(二〇一六年)。医学の進歩により、この十年で一・八倍以上に増えた。各自治体は福祉計画の段階的な策定を進め、障害児の支援施設を増やすことなどを検討している。厚労省の担当者は「地域で障害児を受け入れ、日中通える生活介護の施設を増やす第一歩にしたい」と意気込む。

 しかし、施設の開設には、療育を担う児童発達支援管理責任者など専門性の高いスタッフを配置しなければならないため、人材の確保は難しい。miniやmikiのような施設は珍しく、厚労省も全国にどれだけあるのかは把握しきれていない。医療的ケアが必要な子どもたちの対策は事実上、始まったばかりに等しい。

 施設不足の上に、障害児の通所サービスは児童福祉法に基づいているため、原則、十八歳までしか利用できないとの問題もある。障害者が大人になった後、地域の中でどう生活していくのか。上野さんは先を見据え、来春、高校を卒業した障害者が生活介護を受けられる施設をオープンさせる予定だ。

 「年齢を重ねても、重い障害のある子はほとんど、自分で動き、仕事ができるようにはならない」と上野さん。「とはいえ、いつまでも赤ちゃんのように扱うわけにはいかない。成長に応じたトータルのサポートが必要になってくる。重症児や医療的ケア児の親子が、いつまでも安心して成長を喜べる施設をもっとつくらなければ」 (花井康子)

 

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