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乳がん 再発不安を緩和 アプリ用い、心理療法

名市大 臨床研究参加募る

 多くの乳がん患者が抱く再発への不安を心理療法を使って緩和するアプリを、名古屋市立大大学院の明智龍男教授(53)=精神・認知・行動医学分野、写真=らの研究チームが開発した。効果を確認する臨床研究を始めており、スマートフォンなどを通じて、研究への参加を募っている。(編集委員・安藤明夫)

明智龍男教授

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 乳がんは、毎年約九万人が発症し、女性では最も多いがん。治療技術の進歩で生存率は上昇しているが、治療が終わった後も再発への不安、恐怖、気持ちの落ち込みなど心の問題を抱える人は多い。

 がん患者のメンタルヘルスを研究する明智教授は、うつ病などの治療に使われる認知行動療法の「問題解決療法」や「行動活性化療法」を用いて、生活の質を高めるための診療をしてきた。同様の悩みを抱える人は膨大な数に上るため、「病院を受診しなくても、カウンセリングと同様に患者さんの力を引き出せる手段がほしい」と、アプリ化を思い立ち、ソフト開発会社と研究を始めた。昨年からは、日本医療研究開発機構(AMED)から三年間の予定で研究費を得ている。

スマイルプロジェクトのサイト

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 開発したアプリは、問題解決療法を用いた「解決アプリ」と、行動活性化療法を取り入れた「元気アプリ」。いずれも明智教授が臨床で使っているプログラムを、iPhone(アイフォーン)とiPad(アイパッド)で使えるよう再構成した。

 「解決アプリ」は、キャラクターと対話をしながら、ゲーム感覚で九種類の課題に取り組む。メールで医療スタッフの支援を受けながら、週に三十分程度、通常は八週間、最短で二週間で終了する。

 問題解決療法は、自分ができることを考え、選び、実践していくことで心の問題を解消する療法で、<1>問題点を明らかにする<2>達成可能な目標を設定する<3>さまざまな解決方法を挙げる<4>好ましい解決方法を選択する<5>解決方法を実行し、結果を検討する−の五段階で課題に取り組む=表。昨年、通院患者三十八人に使ってもらったところ、再発の不安・恐怖が減少していることが分かった。

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 「元気アプリ」で活用する行動活性化療法は、自分にとって精神が安定する行動を探し、それを増やすことで心の症状を改善する療法で、アプリでは「やらなくなった行動に気づき、再挑戦する」「新たな行動に挑戦する」の二点に絞った。▽五秒でできること▽五分でできること▽一時間でできること−などできるだけ多くの行動を挙げ、選んで取り組む中でストレスを軽減していく。

 同様のアプリ開発の実績がある京都大の古川壽亮(としあき)教授、国立精神・神経医療研究センターの堀越勝・認知行動療法センター長も研究に参加している。

    ◇  ◇

 臨床研究の対象は、スマホ世代の二十〜四十代の女性で、乳がんの手術から一年以上経過して再発・転移がない人。三年間で四百四十四人に参加してもらい、解決アプリ、元気アプリのどちらかに無作為で割り振って、参加表明時とプログラム終了後の心理テストの結果から、両アプリの効果を比較する。

 申し込みは、研究グループの「スマイルプロジェクト」のホームページ(http://smile-project.org)から。研究概要や愛知県がんセンター中央病院の岩田広治・乳腺科部長の説明動画を見たうえで入力フォームで申し込む。研究の事務局と一度だけ電話でやりとりをした後は、参加の同意確認や心理テストもすべてネット経由。本人確認も、診察券の写真をメールで送ってもらう。

 明智教授は「これだけネットの力を使う臨床研究は、日本では初めてだと思う。セキュリティーの確かなソフトがあれば、今後さまざまな形で医学研究に応用できると思う」と話す。

 臨床研究で効果が実証されれば公開して一般に使ってもらう予定だが、診療報酬の対象にならないため、将来的に運営コストをどう賄うかが課題。関連企業などに協力を呼びかけていきたいという。

 

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