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医療

3D内視鏡で心臓手術 時間短縮 安全性も向上

名古屋第一赤十字病院

 心臓弁の病変部分を切り取る医師の目線の先にあるのは、体内を映した3Dハイビジョン画面だった。こんな心臓手術が、名古屋市中村区の名古屋第一赤十字病院(中村日赤)で実績を伸ばしている。使うのは3D内視鏡。平面的にしか見えない2D内視鏡に比べ、体内の状況がつかみやすく、手術のスピードアップや安全性向上につながっている。(安田功)

画面を見ながら、手術する伊藤敏明医師(左から2人目)=名古屋市中村区の名古屋第一赤十字病院で

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 黒色の専用レンズの眼鏡を着用すると、手術台の向かい側に置かれた画面に、ドイツ製3D内視鏡が撮影した心臓内部が立体的に映し出された。手術室内を取材すると、執刀した心臓血管外科第一部長の伊藤敏明医師(56)と助手の医師二人は、時折、手術具を持った手元に目を落とすだけで、画面をほとんど見たままだった。

 中村日赤が3D内視鏡を導入したのは二〇一五年十月。2D内視鏡では分かりにくかった体内での手術具の動きが一目で分かるようになり、病変部分を切除した後の縫合作業など手術はスピードアップ。2D時代より手術時間は三十分ほど短く、三時間前後となった。

 伊藤医師は「立体的な画像は、2Dの何倍もの視覚情報となる。一つ一つ動作を正確にこなせるようになった」と手応えを語る。安全性アップに加え、手術時間の短縮で合併症のリスク低減にもつながるという。専用レンズの眼鏡を着用すれば、手術室にいる全ての医師や看護師、臨床工学技士らが画面を通じ、患者の容体を確認でき、情報共有しやすいのもメリットだ。

 中村日赤は一〇年、心臓手術で内視鏡を導入。当時は2D内視鏡だったが、メスで胸を開いて行う手術に比べ、脇の下に五百円玉サイズの穴を開けるだけで済み、出血量や痛みが減って患者の身体的負担は大幅に軽くなった。回復も早くなり、開胸手術では十日以上かかった入院日数も術後五日ほどで退院できるように。「傷痕が目立たない」との理由で特に女性に人気が高く、多くは、左心房から左心室に血液を送る「僧帽弁」がうまく閉じない「僧帽弁閉鎖不全症」の治療に利用されてきた。

 ただ、2D内視鏡では手術具の動きが見えにくく、開胸手術に比べ時間がかかるのが課題だった。特に心臓の場合は、合併症を防ぐため時間との闘いとの側面が強く、執刀医は自分の目に頼る開胸手術を選択するケースが多かった。3D内視鏡の導入で「開胸手術と遜色ない早さになった」と伊藤医師。3D技術の進歩で今後、内視鏡手術の普及が進む可能性がある。

    ◇

医師の技術習得に課題も

 新型テレビや映画館での普及と同時に、3D技術はここ数年、全国の医療現場で存在感を増している。3D内視鏡は高価なため、導入は大病院に限定されがちだが、腎臓や食道、前立腺などさまざまな部位の手術で利用されている。世界的にがん手術で有名な内視鏡手術支援ロボット「ダビンチ」も3D画面を見ながら、医師がメスなどを遠隔操作する仕組みだ。

 ダビンチを使った胃がんなどの手術を手掛ける藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)の総合消化器外科の宇山一朗教授(57)は「立体的で各臓器の状況は2Dよりつかみやすくなる。3Dじゃないとできない手術はないと思うが、経験の浅い若い医師には、3Dの方がやりやすいだろう」と指摘する。

3D内視鏡による弁形成などの手術

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 とはいえ課題はある。メスを入れた部分が狭く、手元で手術具を動かしづらいからだ。伊藤医師は「高い技術が要求され、誰でもできるわけではない。最初は経験豊富な医師が立ち会うなどで、安全を確保するべきだ」と訴える。豚を使った研修や、学会主催の講習会などで技術を習得するケースが一般的という。

 また、3D映画で車酔いに似た症状を訴える人もいることから、対応できない医師もいるとみられる。

 

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