トップ > 特集・連載 > 医療 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

医療

「働き方」 揺れる医療現場 地域の病院支える長時間労働

エコーで血管の状態を見る特定看護師。医師の立ち会いがなくても特定の医療行為ができるようになった=愛知県豊明市の藤田保健衛生大病院で

写真

「患者を放っておけない」

 安倍政権の「働き方改革関連法案」が、中部の主要病院に波紋を広げていることが、本紙のアンケートで明らかになった。成立すれば、医師の残業は制限されるが、多くの病院は必要な医師を確保できるか、見通せないでいる。各病院は、救急患者受け入れなどで地域医療を支えるが、長時間労働に頼っているのが現実。識者は医師の労働環境改善の必要性を唱えるが、病院側からは「地域医療が崩壊する恐れがある」といった困惑の声が聞かれる。(安田功)

■義務

 法案が成立すれば、医師の時間外勤務は原則として、月四十五時間に規制される。現行では、労使協定(三六協定)を結べば、医師の時間外勤務は事実上、制限はない。月百時間を超す協定を結ぶ病院もあるが、それさえも守られないケースがある。

 名古屋市立東部医療センターは月百五十時間を上限としていたが、これを超えて医師四人を働かせていたとして、昨年十一月、労働基準監督署から是正勧告を受けた。このうち一人の時間外勤務は、最大で月百七十八時間に達していた。

 医師法が、医師に原則、診療を拒否できない「応召義務」を課している上、職業倫理から「患者を放っておけない」と考える医師が多いことも、長時間労働の背景とされている。働き方改革に関連し、厚生労働省内では、応召義務のあり方の議論も始まっている。

■制限

 既に医療体制の見直しに着手した病院もある。

 諏訪赤十字病院(長野県諏訪市)は昨年十二月から、急患などを除き、医師が患者に対し、手術や病状の説明をするのは原則、平日午前八時半〜午後五時に限る方針を打ち出した。案内文を院内に掲示している。

 以前は急を要さない場合でも、患者の都合を優先し、医師が非番の日に出勤して、説明することがあったという。病院の担当者は「地域医療を守るため、一定の基準を示し、患者や家族の理解を得たい」と話す。

 藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)は、現場での医師の指示なしに、一定の医療行為ができる「特定看護師」制度を活用。十七人が動脈採血や人工呼吸器の操作、エコー検査などを担当する。

 守瀬善一副院長(55)は「病棟に行くなどの作業が減り、医師の負担軽減に役立っている」と説明。増員を図りたい考えだが、看護師が資格を得るために大学院で二年間学ぶ際、無給になることが難点という。名古屋市立大病院では医学部の学生らが心電図移動や患者の家族対応などで、救急の医師を補助する取り組みを始めた。

■本音

 ただ、大半の病院は具体的な対策を打ち出せていない。制度改革に乗り出した政府への恨み節も漏れる。

 岐阜県内のある病院の担当者は、医師法の応召義務に触れ、「昼夜を問わず患者への対応が求められているのに、長時間労働の是正は困難」と明かす。

 中山間地域では既に医師不足が深刻。ある病院担当者は「都市部に医師が集中しており、十分な交代勤務ができる体制がない」と嘆く。愛知県内の病院幹部は「国から改革を押しつけられ、どこの病院も困っている。このままでは地域医療が崩壊しかねない」と心配している。

医師増員が不可欠

 医師の労働問題に詳しい松丸正弁護士の話 過労死ラインを超える時間外労働(月八十時間)は医師の心身の健康を損ね、大きな問題だ。医師も他の職種と同様、労働者であることを病院も認識するべきだ。医師の労働時間削減と現在のサービス維持を両立するために、必要な地域に医師の増員を図ることが不可欠。国は緊迫感を持って対策を進めるべきだ。

 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索