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15〜39歳のがん患者 AYA世代 支援体制に遅れ

集いの場「くまの間」で、仲間同士のおしゃべりを楽しむ加藤那津さん=名古屋市中区で

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 昨年10月に閣議決定された国のがん対策の指針・第3期がん対策推進基本計画に「AYA世代」という言葉が初めて盛り込まれた。15〜39歳の世代で、がんにかかると闘病やリハビリ生活が進学、就労、結婚などとかさなることが多い。小児と中高年層のはざまで、治療や支援体制などの遅れが指摘されていた。現状を考えてみたい。(編集委員・安藤明夫)

 名古屋市緑区の加藤那津さん(39)は、31歳のときに乳がんが見つかり、大学職員として働きながら闘病してきたが、一昨年に肝臓への多発転移が判明。ホルモン治療を続けてきたが、薬が次第に効かなくなり、これまでに薬を三度変更した。体への負担を考え、無理のないペースで患者会などの活動をしながら、治療を続けるという。

 40歳以上の末期がん患者は、介護保険により、訪問介護、入浴介助、福祉用具貸与などのサービスを1割負担で受けられるが、AYA世代は対象外。加藤さんは昨年、この世代のがん患者への在宅療養支援を求める要望書を名古屋市に出し、新年度から介護保険と同等の在宅サービスの利用料助成の制度が設けられた。

 国の方針を受けて、AYA世代への支援に取り組む自治体が少しずつ増えている。しかし、中高年層に比べ患者数が少ないこともあり、ニーズに合った相談窓口や自助グループは乏しい。加藤さんが当初参加していた患者会では中高年者が多く世代ギャップを感じたため、3年前に「くまの間(ま)」というグループを新たに立ち上げた。年齢の近い患者も多く、同市内の公共施設などで定期的におしゃべり会、食事会を開いて交流を続けている。

 にぎやかな女子会のような雰囲気の中で「子どもに病気のことを言うべきか」「職場に過剰に心配されずに理解してもらうには、どうしたらいいか」など、悩みごとを相談したり、つらい副作用の体験を「私も−」と笑い合ったり、ウイッグ(医療用かつら)の情報交換をしたり。

 加藤さんは「家族や友人にも言えないことを打ち明けられて、元気になれたという人も多い」と話す。しかし、こうした支援がある地域はごくわずかだ。

課題は?

 AYA世代をめぐる課題はさまざま。厚生労働省の研究班の代表を務めた堀部敬三・名古屋医療センター臨床研究センター長は、次のように指摘する。

1、進学、就労、結婚

 10代は就学、進学。20、30代は就労、復職、結婚、出産など、世代によって抱える問題が異なる。小児がんの治療後の患者だと、晩期合併症(抗がん剤や放射線治療の影響によって生じる合併症)を併発することも多く、長期のフォローが重要になる。終末期を含め、在宅療養の支援も課題。

2、乏しい診療実績

 小児がんと違って診療科がばらばらで、患者数も少ないため、多くの医師たちはこの世代を診た経験が乏しい。同じ種類のがんでも小児とは治療戦略が異なる場合は多い。医療機関を集約して、地域でサポートする体制を考えていく必要がある。

3、生殖機能に影響

 AYA世代に発症するがんは、卵巣がん、精巣がんなど、性腺の腫瘍が年齢とともに増えていく。生殖機能に影響を及ぼすケースが多く、相談しにくくて治療が遅れることも。治療前の正しい情報提供が大切。

      ◇

 第3次がん対策推進基本計画には、同研究班の報告をもとに、診療体制、ニーズに応じた相談支援の検討や、生殖機能への影響に関する情報提供などが盛り込まれた。堀部さんは「まだAYA世代という言葉さえ知らない医師もいる。これからの6年間は認識を高め、足場固めをしていく時期」と話す。

 AYA Adolescent and Young Adult(思春期および若年成人)の略。この世代に発症するがんは、小児に比べて治療成績が悪く、その背景に治療経験の乏しさが指摘されている。

 

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