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子の発達障害 診療時に伝えるべきか? ホンネ外来 発

受診支援する自治体も

 2月13日付のホンネ外来「検査嫌がる息子に、医師が『出て行け』」は、医師の反応への感想だけでなく、息子が発達障害であることを受診前に伝えるべきだったのかと悩み、問いかける内容でもあった。本紙には、「伝えたら対応が丁寧になった」「周囲に協力を求めて」などの声が寄せられた。受診時に患者や家族はどうすればよいのか。医療機関の態勢はどうなっているかを探った。(小中寿美)

 投稿したのは、小学校三年で自閉症スペクトラム障害(ASD)の息子がいる岐阜県の女性(49)。小児科でインフルエンザの検査を受けた際、息子が過去の嫌な記憶を思い出し、うずくまって抵抗して医師を怒らせた。女性は受診前、息子に障害があることを医師に伝えなかったが、「診断されたばかりで、息子がこんな反応をするとは想像できなかった」と説明した。

 この対応に「先に伝えておくべきだったのでは」との意見が本紙に多く寄せられた。三重県の女性教員(44)は「障害を知らずに接している人間が『なぜだ』と思うのは仕方がないこと」と指摘。「きちんと話すことで理解してもらえる。まずはお母さんが障害を受け入れ、周りの人たちに協力を求めて」と訴えた。

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 小学四年の息子が同じASDの岐阜県のパート女性(42)は「障害が分かる前は病院へ連れて行くのが憂鬱(ゆううつ)だった」と共感する。特に歯科医では泣く、蹴る、器具をかむなどして嫌がり「こんなこともできないのか」と言われたことも。二年前に診断を受けてから状況は変わった。

 今は受診の際、受付で「発達障害があり、音に過敏で光が苦手です」などと記した紙を渡している。「使う器具を先に見せてくれたり、おもちゃを持たせてくれたり。医師も看護師も丁寧に接してくれるようになった」。息子には病院に行く理由を説明し、嫌がった時は耳を傾け、本人が納得できる形で受診している。

 重度心身障害者の母親で三重県のパート女性(56)は「理解のない病院も確かにあるが、話せば配慮してくれる病院もある。親の会などのつながりから見つけて」と助言した。

 愛知県が運営する「あいち発達障害者支援センター」(春日井市)は二〇〇九と一二年に、名古屋市の支援センターと県内の医療機関を対象にアンケートを行い、発達障害の患者への配慮は可能と回答した医療機関をホームページで公開している。

 障害者医療費の助成を受けていれば、医療証で障害を知らせることができる。制度の対象とならない患者も多いが、患者の特徴や配慮してほしいことを伝えるカードなどを作る取り組みも。愛知県は「受診カード」を作り、県ホームページからダウンロードできる。名古屋市も「受診サポート手帳」を配布している。

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病院側の工夫で効果

 発達障害者が受診の際に困難に直面するのは、大きな音を怖がるといった感覚過敏や落ち着きのなさ、嫌な経験をよく覚えているなどの特徴があるためだ。脳神経外科医で、障害者の親として千葉県自閉症協会会長も務める大屋滋さん(61)は「暴れる、触らせないといった医療スタッフから見て問題のある行動にも、必ず本人なりの理由があり、支援方法がある」と理解を呼び掛ける。

 医療機関ができる配慮とはどんなことなのか。一般的には、待ち時間の配慮や別室での診察などがあるが、佐々木こどもクリニック(名古屋市名東区)の佐々木邦明院長(67)は「これからすることを絵で描いたり、お母さんにやって見せたりして説明する。検査を嫌がる時は無理に検査はせず、症状などから診断することもある」と話す。

 市内の眼科の院長(61)は「障害を事前に知らされないこともよくあるが、可能性があると感じたら、できる限り対応する」。むやみに体に触れないことなどを心掛け、「事前に分かれば心構えができてなおいい」と考える。

 千葉県が二〇〇五年に県内の医師や歯科医師を対象に行ったアンケートでは、医療関係者が苦労している現状も浮かんだ。自閉症などの障害者の診療で困ったことは「訴えが分からない」がトップ。「診療を断らざるを得ない場合がある」と答えた医師、歯科医師とも半数を超えた。

 調査にかかわった大屋さんは「手間と時間がかかるのに制度上の配慮がないことも問題」と指摘する。障害者の診療に保険点数の加算があるのは歯科だけ。「加算がなければ、受け入れるための工夫や努力につながらない」とみる。

 厚生労働省の研究班が〇八年、医療機関向けに発達障害児の診察で配慮すべき点や工夫例をまとめた診療ハンドブックを作成。患者が医師に渡すことを想定した簡易版もあり、大屋さんは利用を勧めている。

 簡易版「発達障害の人たちをよろしくお願いします」は、発達障害情報・支援センターのホームページからダウンロードできる。

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 「ホンネ外来 発」は、随時掲載します。「ホンネ外来」は医療現場での体験や感じたことを紹介し、患者と医療者双方の相互理解を深める欄です。医療者からの投稿も募集しています。〒460 8511 (住所不要)中日新聞医療取材班。ファクス=052(222)5284、左記の電子メールで。紙面では匿名ですが〒、住所、氏名、年齢、職業、電話番号を必ずご記入ください。

 

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