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医人伝

 みずほ在宅支援クリニック(名古屋市瑞穂区) 院長家田秀明さん(56) 「生」が輝く在宅支援を

「爪、きれいに切ってもらっているね」と、寝たきりの女性に声をかける家田秀明さん

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 年明けの訪問診療。「お正月は、おすし、たくさん食べた?」と尋ねると、寝たきりの女性(70)は元気な声で「食べ飽きたわー」。在宅支援を始めた二年前は、抗がん剤の副作用で衰弱し、何も食べられなかった。

 「先生が薬を調整して、丁寧に支えてくださったおかげ」と、介護する夫(78)は語る。昨年末の誕生日は子どもたちも集まって祝い「家内の笑顔を見たら、涙が止まりませんでした」。

 二〇一七年に「みずほ在宅支援クリニック」を開業。終末期のがんや重い神経難病などを専門にし、瑞穂区などの名古屋市南西部で百人前後の在宅患者を支え、年間に約八十人をみとる。二十四時間対応で、週に二回は夜中の緊急コールがある。休める日はないが「住み慣れた家で、最期まで安心して過ごせるように」と、走り続ける。

 愛知県知多市の出身。名古屋大医学部を卒業し、当初は消化器内科医に。研修医として赴任した病院で、治療困難な膵臓(すいぞう)がん患者の苦しみを目の当たりにして「何とかしてあげたい」と強い思いにかられた。

 大学に戻り、体への負担の少ない内視鏡治療や抗がん剤の研究を経て、一九九八年に名古屋市の名古屋掖済会病院へ。院長に提案して二〇〇〇年に緩和ケア病棟を設けてもらい、緩和ケア医に転身した。痛みの管理、精神的なサポートなどの腕を磨き、動物セラピーも取り入れた。

 しかし、国策で入院期間の短縮が進み、診療の自由度も小さくなった。「今までやってきた質の高い医療を在宅に持ち込み、患者さんを支えたいと思うようになりました」

 みとりを担う在宅医は増えてきた。だが、▽モルヒネで吐き気の出る患者には先に吐き気止めを飲んでもらう▽朝方の痛みが強ければ寝る前の薬の量を増やす−といった判断は、経験の乏しい医師には難しいという。

 一人一人を丁寧に診る分、一日に回れる数は限られ、効率は悪い。でも「患者さんが、人生の残り時間に死を考えて過ごすのではなく、生を輝かせたい。好きな物を食べ、自力でトイレにも行けるようにしてあげたい。それが家族の思いにも応えること」と言う。

 クリニックでは毎月、医療・介護・福祉関係者向けのメディカルカフェを開く。終末期を支える仲間を増やしながら、「死の迎え方」への意識啓発も図っている。(編集委員・安藤明夫)

 

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