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医人伝

名古屋市立大大学院(名古屋市千種区) 芸術工学研究科准教授 藤井尚子さん(49)

着やすくおしゃれな病衣

 「入院中でも自分らしくおしゃれをし、それでいて着心地の良いものを身に着けたい」。大腸がんで長期間、入院していた義母の言葉が、二〇〇九年から続けている患者の寝間着(病衣)研究の原点になっている。

 義母は、浴衣のような寝間着を支給されていたが「胸の部分がガバガバで、闘病で痩せた体をさらすようだった」。人目を気にし、元気もなくしていた。以前から研究していた服飾デザインの分野で、同じ思いの患者のために、と病衣を作り始めた。

 スムーズな診療のためには機能性が求められ、不自由な体で脱ぎ着したり看護師らに着せてもらったりするため、簡単な作りでなければならない。入院中は横になった状態での着心地の良さも重視される。「着やすさ」と「着心地の良さ」にポイントを絞り、腕周りを大きくしたり背中部分の面積を広くしたりしてみたが、生地の量が多くなって、もたついたり重くなったりしてしまった。

 そんな中、一一年に研究調査のために出掛けたフィンランドの病院や高齢者施設で、カラフルなパジャマで過ごす患者の姿に感銘を受けた。市販品だったが色柄の違う数種類から好きなものを選べ、ベッドリネンもデザインが豊富だった。「入院中でも毎日違うデザインの服を身に着け、変化を楽しんでいた。服や部屋は自分らしさを担保するものだと実感した」。帰国後、試行錯誤を繰り返すうち、伸縮性のある有松・鳴海絞を取り入れることを思い付く。「地場の伝統も生かせる」と病衣への応用を試みた。

有松・鳴海絞を取り入れた病衣を研究する藤井尚子さん

写真

 決め手となったのは、ポリエステルなど合成繊維の織物の形状を安定させるため、仕上げに使われる「ヒートセット加工」。この加工を施したポリエステルの絞りを、脇腹や袖の部分にプリーツのように取り付けると、伸縮し、生地の量を増やさなくても体が動かしやすく脱ぎ着もしやすくなった。見た目もおしゃれで、「違和感なく受け入れられる」。

 市販のめどは立っていないが、女性が下着を着けなくても透けないように胸の部分を二重にしたりするなど「個々の病状に合わせて改良を加えたい」と意気込む。「病院でも自分らしく、おしゃれも楽しめると、前向きに闘病生活を送ることができる。そのサポートをしていきたい」(花井康子)

 

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