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 女性クリニックWe!TOYAMA院長種部恭子さん(54) 男性中心の医療に異議

 産婦人科医として新潟県や富山県の救急病院で勤務した後の二〇〇六年、「男性中心の医療を変えたい」と、富山市根塚町で「女性クリニックWe!TOYAMA」を開いた。「周囲は男性医師ばかりだった」という救急病院。去り際に「女性だけを対象としても、それほど需要はない」とやゆされたが、女性ならではの悩みを丁寧に診察することで、今では検診の予約は数カ月待ちが当たり前になった。

「性差医療がより良い医療につながる」と話す種部恭子さん

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 富山市出身。もともと男性中心で女性への配慮に欠ける医療に疑問を抱いていた。高校生の時に産婦人科を受診した際、男性医師からいきなり「セックスの経験はあるのか」と聞かれた。診察室は廊下とカーテン一枚で仕切られただけ。音漏れする場所だった。

 「何でこんなことが言えるんだ」と怒りがこみ上げた。次第に「自分が医療界を変えたい」と思うようになり、富山大医学部の前身の富山医科薬科大に進学した。

 今も女性医師を取り巻く環境に満足はしていない。今夏、東京医科大医学部で女子受験生の合格者数が意図的に抑えられていたことが発覚した。自らの経験から、以前からそんな傾向を感じていたという。各大学の学部別の男女別の合格率を調査。医学部だけが男子の合格率が突出して高かったことを調べ上げ、昨年八月、「女性医師を『増やさない』というガラスの天井」という論考を発表した。

 論考では、医学部の受験では意図的に女子の合格率が抑えられている疑いがあることを指摘。「受療者の半数は女性。当事者性を持つ女性医師が安全を高めることにつながる」と女性医師の重要性を訴えている。

 ただ「男性中心になる背景を知ってほしい」とも語る。豪雪地帯の救急病院で勤務していたころ、医師は休みの日でも、患者が搬送されれば出向かなければならなかった。自らの出産時「女は出産で休めていいな」と同僚に言われたことも。腹も立ったが、多忙なあまりいらだつ同僚の気持ちが分からないでもなかった。

 「男女が平等に働けるために労働環境を見直すべきだ」と提言。根底にあるのは「男性と女性の特徴の違いを考慮して治療にあたる性差医療の発展がより良い医療につながる」との思いだ。「だから、ガラスの天井は壊さなければならない」。そう信じている。 (向川原悠吾)

 

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