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医人伝

 彦根市立病院 看護副部長 北川智美さん(50) 在宅患者の床ずれ治療

 医師の指示範囲内で一定の医療行為ができる「特定看護師」。在宅医療推進に向け活躍が期待されている。二〇一六年三月、滋賀県でその第一号となった。床ずれの予防と治療の専門家だ。

 床ずれは、寝る体勢や低栄養などが要因で発生する。食事が取れない人がいれば、栄養士のもとへ走り、看護にとどまらない総合的な医療を目指してきた。苦しむ患者を「何とかしてあげたい」との思いから、〇六年、スキンケアに関して高度な技術と知識を学んだ「認定看護師」になった。同じ体勢を続けないなどの対策を病棟で始めると、百人近くいた床ずれ患者は、六年ほどで十人以下に減った。

患者に寄りそう看護を目指す北川智美さん

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 〇八年には、院内の関係者に呼びかけ専門外来を開設。県内外から患者が来院し、家からレスキュー隊の助けを借りて来た人も。通院できない患者には自宅を訪問。皮膚の一部が壊死(えし)し、切除が必要な人もいたが、当時は看護師の処置が認められておらず、もどかしさが募った。

 国が「特定看護師」を増やすため、研修制度の試行事業を始めたのは同じころ。「日本の看護が変わるなら、自分も参加したい」と、事業に応募。埼玉医科大などで、皮膚の切除や縫合を学んだ。資格を得て、医師しか許されなかった壊死した皮膚の切除などが可能になったが、看護師の立場を忘れない。

 滋賀県長浜市出身。福井県内の看護専門学校を卒業後、滋賀県内の病院に准看護師として飛び込んだ。さらに技能を高めようと働きながら学び、正看護師試験に合格。彦根市立病院に移って約三十年、現在は在宅患者に寄りそう治療を目指す。

 終末期患者を訪ねたときだった。おしりに床ずれがあり、治療すると、日ごとに傷が小さくなった。「よくなってきたね」と声を掛けると「死ぬ前に尻を褒められるとは。こんな体でも、先生方の治療にお応えするところが残っていた」。入院中、手の施しようのない体を申し訳なく思っていたという。

 「患者にとって自分の行為が希望になるなら」。患者が床ずれの治療に希望を見いだしていたように感じたため、治療に見せかけるため、はさみを当てるだけの日もあった。患者が亡くなり、遺族から渡された手紙には「床ずれの先生、きたがわさん。わしの尻は最後まできれいでしたか」と記されていた。

 「患者と会話しながら治療を進める大切さを知った。これからの在宅医療で、少しでも患者を救えたら」 (浅井弘美)

 

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